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2024.08.21

【報告】国際シンポジウム「近現代中国仏教と民族国家」(一日目)

2024年719日と20日、東京大学東洋文化研究所にて国際シンポジウム「近現代中国仏教と民族国家」が開催された。20世紀以降の近代中国社会の激変における仏教の変容と再生を検討し、「現代中国仏教と国家」「現代中国仏教とナショナリズム」「現代中国仏教と世界」の3つのテーマを通じて、政治、宗教、国家と民族のアイデンティティ及び国際交流の面での現代中国仏教に注目した会議であり、日本、中国、アメリカ、フランス、カナダから20人以上の研究者が参加した。今回の会議は、東京大学東アジア藝文書院(EAA)、青山学院大学、フランス国立東方言語文明学院、フランス多学科仏教研究センター、中山大学仏学研究中心、北京大学仏教典籍与芸術研究中心、東京大学旭日基金、フランス国立東方言語文明学院旭日基金の支援を受けて開催する運びとなった。

 

 

初日は19日午前から、馬場紀寿氏(東洋文化研究所教授)と柳幹康氏(東洋文化研究所准教授)の開会挨拶で始まった。

 

 

 

1セッションは陳継東氏(青山学院大学教授)が司会を務めた。湛如氏(北京大学教授)は体調の関係で出席できず、大学院生の馬熙氏が論文を代読した。論文は伝印法師の1981年から1983年までの日本留学を切り口とし、『中国仏教与日本浄土宗』の成果―中国仏教の日本仏教に対する主導的な影響を強調したこと、中国浄土宗の日本浄土宗に対する主導性及び善導の日本浄土宗における祖師としての高い地位を際立たせたこと、日本浄土宗の概況を客観的に紹介したこと、日本浄土宗の組織構造と運営のメカニズムを詳細に紹介したこと―を評価した。続いて、龔雋氏(中山大学教授)は近代中国社会の「現代性」の文脈の中で、太虚(1890-1947)の政教関係思想を詳しく検討した。中国仏教には二つの異なる政教論が存在し、「不依国主、即法事難立(国主に依らずんば、即ち法事立ち難し)」と仏教と政治の依存性を強調し、「沙門不敬王者(沙門は王者を敬わず)」は僧伽が政治に足を踏み入れてはならないことを強調したと指摘し、太虚と欧陽竟無はこの二つの学説を代表しており、われわれは具体的な文脈の中でより綿密な思想史的議論を行う必要があると述べた。

 

 

午後は第23セクションが続き、第2セクションは柳氏が司会を務めた。陳継東氏は、鈴木大拙が20世紀初頭の訪中中に『支那仏教印象記』を書いた背景を検討し、「中国仏教堕落論」への批判、および中国仏教の民族性の視点から鈴木の思想を深く分析した。陳氏は、鈴木の中国仏教観は決して中国仏教の立場に立っているのではなく、中国仏教の仏教としての歴史的、現実的な限界性を明らかにし、中国仏教の東アジア普遍性を疑問視するとともに、中国仏教徒がそれを自覚しているかどうかを問い詰めるものだと指摘した。王頌氏(北京大学教授)は近代中国制度の儒学と応用仏教学の問題について発表した。王氏によれば、制度儒学と応用仏教学とも制度制定に関与する意欲があったが、結局、旧制度の破壊者になっただけで、新しい制度の作り手にはなれず、また、両者とも伝統の継承と解釈を提唱しているが、実際には伝統の復興者ではなく終結者になった。現代科学、現代政治のメカニズム、現代歴史の発展の流れに合う実践的方法の模索に失敗したため、制度儒学と応用仏教学の主張は実現し難く、その影響力はのちにも急速に消えたという。融道氏(マギル大学准教授)は民国の仏教教育と公民観の形成について報告し、中国の仏教徒が法律的権利、政治参加と公民の義務の発言権を仏教救済論の再解釈と結合したことで、仏教的言語にしっかりと根ざした民族的アイデンティティを生み出し、それによって独特な公民身分を形成したことを検討した。

 

 

3セッションは王頌氏が司会を務めた。汲喆氏(フランス国立東方言語文明学院教授)は、政教相互作用の制度化の視点から20世紀の全国的仏教協会を検討した。現代中国仏教の重要な新しい制度である全国的仏教会の誕生の背景には、「廟産興学」、「宗教」概念の創出、及び現代政党社団の新しい組織モデルがあった。この新しい機関は1912年に登場した以来、さまざまな紆余曲折を経て、宗教と司法の二重の意味で中国仏教の集団的人格と公式イメージを構築することに力を入れてきた。その後、1953年に北京で設立された中国仏教協会は政教の相互作用の最も主要な制度化された意思疎通ルートとなったという。沈庭氏(武漢大学准教授)は近代アジア仏教間の交流、知識の生産とアイデンティティの視点から西洋の学術における「南伝仏教」と「北伝仏教」の区別、近代日本仏教における「大乗仏教」認識、近代中国仏教におけるセイロン仏教の定義などを分析した。西洋の植民地拡大とグローバル化の進展に伴い、仏教学者、居士エリートと護法僧侶の間、東洋文化と西洋文化の間の交流が日々増え、これは仏教知識の概念化を推進し、新しい仏教用語や概念、カテゴリーを形成し、人々の仏教の歴史と現状に対する想像と認知に影響を与えていると述べた。

 

 

報告者:黄霄龍(EAA特任研究員)