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2019.09.27

EAA北京大学集中講義2019(1)

2019年9月6日〜10日の五日間、「北京大学集中講義2019」が行われた。EAAではアジアの共通の未来を担う人材の育成を目的として東京大学と北京大学の学生が共に学ぶ集中講義を開講しており、今回、近代古典シリーズ講義の第一弾として「文明とその批判者」をテーマとする講義を開催する運びとなった。集中講義には両大学から選抜された20名の学生(10名ずつ)が参加し、活発な議論と友情を分かち合った。

以下はその五日間の報告である。

2019年9月6日は移動日であった。今回は学部1年生が多かったため多少の懸念があったが、学生全員が待ち合わせ時間より早く集合するなど、すべての手続きが順調であった。学生同士とスタッフ・教員間のこうした協力と気配りは全日程において見いだされ、この研修を成功させる土壌となった。夜遅く無事に北京空港に到着した私たちは、空港まで迎えに来てくれた北京大学のTAと出会い、ホテルに到着、明日以降を楽しみながら1日目を終えた。

報告者:具裕珍(EAA特任助教)

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2019年9月7日の二日目は初の北京大学訪問となった。北京大学の西側に宿をとっていたため、西門から入校した。西門は北京大学のシンボルともなっており、北京大学の学生にとっても、北京大学を訪れる者にとっても重要なスポットである。門を入ると道が開け、池を中心とした自然豊かな景色が現れる。西門の外側の喧騒から一転して自然豊かな静かな空間が広がり、北京大学を初めて訪問する学生にとって、大きな衝撃となった。二日目に予定されていたのは、北京大学の学生との交流とEAAの教授である石井剛氏(東京大学)による講義である。私たちはその会場となる元培学院の建物、「俄文楼」に向けて歩みを進めた。

教室で待っていたのは、今回の受け入れ担当教授である章永楽氏(北京大学)と、十人の学生、そして補佐などを担当する四人の大学院生であった。席は両校の学生が隣同士に座れるよう配慮されており、席に着いた後、早速北京大学からの歓迎の挨拶を受け、続いて自己紹介の時間となった。使用言語は英語・中国語・日本語の三ヶ国語、中国語が話せる東大の学生は中国語を使用し、北京大学の日本語学科の学生による流暢な日本語も披露された。自己紹介の後は五つの四人グループに分かれ、北京大学の学生の引率による校内見学が行われた。北京大学は非常に広大な敷地を有しており、教室や寮、食堂がある区画を歩くだけでも一時間近くかかる。また「未名湖」と呼ばれる大きな湖が学内にあり、雄大な景色を感じ取ることができる。東京大学の本郷キャンパスも広い敷地を有しているが、それをはるかに凌ぐ大きさに驚く学生も多かった。校内見学の後は教室に戻って音楽交流が行われた。北京大学側からは二人の学生がそれぞれのパフォーマンスをした。東大側は応援歌「ただ一つ」が二人の学生によって歌われた。

以上が午前の活動である。学食で昼食をとった後、午後は石井氏による三時間の講義が行われた。講義は二つのパートから成っており、前半はEAAの理念とその意義について語られた。これは最初の挨拶から何度も繰り返し強調されたことだが、今回の北京訪問は日中交流において歴史的な一ページになる。両国の交流はこれまで幾度となく行われたが、東京大学と北京大学が共通のプログラムを立て、学生と教員の交流を活発に推し進める試みはこれまで空前のことであった。今後の日中関係、そして東アジアの未来を考える上で、この交流は重要なスタート地点であり、学生に対して大きな期待を寄せている旨が語られた。

講義の後半は「Civilization and its Critics」と題され、岡倉天心や章炳麟など日本と中国の学者について語られた。西洋列強が東アジアに至ったことで、日本や中国の学者たちは従来とは全く異なるシステムや学問に触れる中で様々な反応と思索を繰り広げた。「civilization」は今でこそ「文明」と翻訳されるが、当時はこの翻訳自体が大きな問題となった。そして石井氏の専門でもある章炳麟は「倶分進化論」において、社会の進化において善だけが進化するのではなく、悪も進化するという主張を展開した。西洋由来の「civilization」を如何に考えるか。今日の東アジアにおいて尚問題であり、同時に西洋にとっても常に再考を求められる問題でもある。石井氏の講義ではこうした問題に対して明確な結論は示されず、その場にいた全員に今後も考えて欲しい問題として投げかけられた。

講義後は少しの自由時間の後、夜には北京大学から歓迎の意を祝して食事会が開かれた。昼間に仲良くなった友人たちと席を共にしながら、次々と運ばれてくる豪勢な料理を堪能した。食事会には北京大学側で東アジア藝文書院のプログラムに参加している教員も訪れていた。そのうちの何人かは、今後北京大学の学生が東京大学に訪れた際にまた顔を合わせることになるだろう。両校の交流が今後も続いていくことを感じ取り、期待も高まった。

食事後、宿へ戻った。翌日にはEAAの教員である中島隆博氏の講義と、両校の学生によるグループワークが予定されている。グループワークへの少々の不安と期待を抱きながら、翌日に備えて早めの休息をとった。

報告者:建部良平(EAAリサーチアシスタント)