『啓蒙思想の百科事典』が丸善出版より刊行されました。
本書はEAAメンバーの武田将明氏(総合文化研究科教授)が編集幹事、EAAフェローの
【内容紹介】
ヨーロッパ史における18世紀は「啓蒙の時代」と呼ばれる。続く19世紀の「革命の世紀」への序章とのみ通俗的にはみなされがちであったこの時代は、しかし、近年になって科学技術の進歩、社会と商業の発展・拡大、人々の交流など多様な側面から、理性による「知」の地殻変動が起こり、自由や寛容といった新たな価値観が生み出された時代であるととらえ直されている。本書では啓蒙思想を研究する、日本のあらゆる領域を研究対象とする研究者が集結。時代と担い手を変えながら変貌していくプロセスであり、運動であり、中心のない波動としての、また「近代」を育くみながらそれをも超える、啓蒙の多彩で豊饒な世界を浮き彫りにしていく事典。
【目次】
●第1部 研究史
総 論/『啓蒙主義の哲学』(カッシーラー)/『ヨーロッパ精神の危機』(アザール)/
『文明化の過程』(エリアス)/『啓蒙のユートピアと改革』(ヴェントゥーリ)/『透明と障害』(スタロバンスキー)/『批判と危機』(コゼレック)/『自由の科学』(ゲイ)/『マキァヴェリアン・モーメント』(ポーコック)/『猫の大虐殺』(ダーントン)/百科全書研究/フランス革命の研究/日本の啓蒙研究(1)――総論/日本の啓蒙研究(2)――各国の研究/【コラム】ヨーロッパの成立/【コラム】啓蒙はEnlightenment か?
●第2部 啓蒙の起源
総 論/イタリア・ルネサンス/原子論/懐疑主義/科学革命/旅行記/寛容論/社会契約論/モンテーニュ/リベルタン/ホッブズ/デカルト/ケンブリッジ・プラトニスト/ロック(ロック主義)/スピノザ/マルブランシュ/ライプニッツ/ベール/フォントネル/【コラム】真空
●第3部 啓蒙時代
総 論
第1章 啓蒙とは何か
フランス啓蒙/名誉革命体制/イングランド啓蒙/スコットランド啓蒙/ドイツ語圏の啓蒙/イタリア啓蒙/スペイン語圏の啓蒙/オランダの啓蒙/スカンディナヴィアの啓蒙/ポーランドの啓蒙/ロシアの啓蒙/多言語世界の啓蒙――国際都市ケーニヒスベルクとカント/ラディカル啓蒙/アメリカ独立と啓蒙/フランス革命と啓蒙/フランス革命の反響(イギリス・ドイツ)/ジェンダー/ユダヤ人と啓蒙/イスラームと啓蒙/18 世紀日本と啓蒙/18 世紀中国と啓蒙/新儒学(新儒教)と啓蒙/【コラム】オラトリオ
第2章 思想・哲学・宗教
理神論/唯物論/無神論/観念論と実在論/人類/教養,陶冶/幸福/コモン・センス/文芸共和国/ヘルメス主義/地下文書/フリーメイソン/『百科全書』/ストア主義/キケロの受容/義務論(キケロからの展開)/18 世紀の聖書研究/ジャンセニスム/アンチ・フィロゾフ/非国教徒/敬虔主義/福音主義/典礼論争/歴史記述/エルヴェシウス/経験的心理学――合理的心理学から経験的心理学へ/自愛心・エゴイズム/無意識の発見/オリエンタリズム/南洋/蘭学/フィロゾフ/ヴィーコ/ヴォルフ/モンテスキュー/ヴォルテール/ヒューム/ルソー/ディドロ/ヴィンケルマン/カント/レッシング/汎神論論争/リヒテンベルク/ヘルダー/ゲーテ/シラー/フンボルト/キリシタン時代と蘭学時代間の儒教精神――新井白石とシドティとの出会い/洪大容と山片蟠桃/【コラム】オートマトン
第3章 科学と技術
自然誌――ナチュラルヒストリー/ニュートン主義/複数世界論/実験/機械論と生気論/化学/フロギストン,カロリック,ミアスマ/数学/動物磁気/観相学と骨相学/王立協会と科学アカデミー/印刷技術/インテリア/測定と器具/織機/蒸気機関――産業革命の動力源/【コラム】気 球
第4章 文学・芸術
小説/書簡/シュトゥルム・ウント・ドラング/ゴシック・ロマンス/リベルタン文学/民謡,民話の発見/黒人のナラティブ/『ロビンソン・クルーソー』――近代人の寓話/『ガリヴァー旅行記』と科学諷刺/『カンディード』――わたしたちの庭を耕さなければならない/『悪徳のさかえ』(サド)/『歓喜に寄す』――友情と熱狂の酒宴歌/演劇/シェイクスピア・リヴァイヴァル/オペラ/ポリフォニーとホモフォニー/器楽の美学/魔笛/ダンスとバレエ/バロック/ロココ/古典主義――美術における/風景と庭園/ピクチャレスク/ゴシック・リヴァイヴァル/新古典主義/諷刺画/《シテール島の巡礼》(ヴァトー)/《食前の祈り》(シャルダン)/《マハ》(ゴヤ)/トルコ趣味/シノワズリー/劇場/美術館/修辞学/崇高/趣味/センシビリティー(感受性)/天才/熱狂/新旧論争/美学の誕生/文献学/芸術批評/【コラム】啓蒙期の西洋舞台芸術における異郷
第5章 「改革」と「改良」の時代――政治・法律・経済
ブルジョワ,市民の概念について/市民社会/コスモポリタニズム/人権宣言/女性の権利/平和論/自然法/共和主義/権力分立/統治の学/官房学/啓蒙専制君主/主権と戦争/帝国の盛衰論/ラディカリズム/革命/国民・民族主義・祖国愛/私的所有/奢侈論争/人口論争/商業社会/貿易・交易/奴隷貿易/植民地/金融/経済学の誕生/重商主義/重農主義/『市民社会史論』/『国富論』/【コラム】理性の時代
第6章 「市民」の形成――社会・文化
社交性/マナー/マナーズ/言論・印刷の自由/ジャーナリズム/『スペクテイター』/辞典・事典と啓蒙/著作権と出版業/都市計画・都市開発/コーヒーハウス/サロン/読書クラブ/奢侈/ファッション/習俗と社会学/大学/教育/『エミール,または教育について』/グランド・ツアー/博愛/慈善事業/ガストロノミー/プライヴァシーの誕生/東アジアの文芸共和国/ケンペルの日本論/【コラム】活人画
●第4部 19世紀
総論/進歩史観と啓蒙/ロマン主義と啓蒙/自由主義と啓蒙/功利主義と啓蒙/社会主義と啓蒙/日本の「啓蒙」/中国の「啓蒙」/梁啓超/近代朝鮮の「啓蒙」/アフリカの啓蒙/【コラム】リングワ・フランカ
●第5部 現代と啓蒙
総論/啓蒙の弁証法/フーコー――啓蒙のリミットを超えて/ハーバーマース/再帰的近代化/ポストモダンと啓蒙/編集知 /啓蒙と環境 /【コラム】自然に帰れ
●付録
『啓蒙思想の百科事典』主要作品年表/参照・引用文献/事項索引/人名索引/作品索引