法政大学出版会より『東アジアにおける哲学の生成と発展 間文化の視点から』が刊行されます。本書にはEAAメンバーの中島隆博氏(東洋文化研究所/EAA院長)、鈴木将久氏(人文社会系研究科)、張政遠氏(総合文化研究科)、佐藤麻貴氏(総合文化研究科)の論文が収録されています。
東アジアにおける哲学の生成と発展 間文化の視点から
廖欽彬、伊東貴之、河合一樹、山村 奨 編著
【内容紹介】
19世紀から21世紀の現在まで、異文化たる西洋の学問を翻訳し受容してきた東アジア各国の思索者たちは、近代との葛藤や伝統思想の批判的継承のなかでいかに苦闘し、自らの哲学を作り上げてきたのか。そしていま、先人たちの遺産をもとに、東アジアにはどんな〈世界哲学〉の構想が可能なのか。日中台韓越の研究者が集結し、国際日本文化研究センターで開かれた共同研究会の画期的成果。
【目次】
まえがき──東アジア哲学の形成をめざして 【廖欽彬】
凡 例
第Ⅰ部 日本哲学と西洋哲学
田辺元による日本における最初のハイデガー受容 【藤田正勝】
永遠の今 西田幾多郎と九鬼周造 【嶺秀樹】
和辻・マルクス・アリストテレス 和辻倫理学の生成 【安部浩】
九鬼周造 偶然‐必然の戯れとしての芸術と実存 【上原麻有子】
懺悔道のポエティクスに向けて 田辺元『ヴァレリイの芸術哲学』再読 【杉村靖彦】
九鬼周造とジャック・デリダ 偶然性をめぐって 【亀井大輔】
西田幾多郎の思想における「永遠」 概念の変遷をめぐる一試論 【フォンガロ・エンリコ】
歴史主義としての田辺哲学 【竹花洋佑】
三木清とハイデガー 基礎経験と公共圏をめぐって 【廖欽彬】
日本近代美学と「あはれ」 大西克礼を中心として 【河合一樹】
日本哲学史形成期におけるフッサール現象学の受容 【浜渦辰二】
新田現象学と西田哲学 【谷徹】
現象学者としての尾高朝雄 一九三〇年代の社会団体論を中心に 【植村玄輝】
日本のハイデガー受容における弁証法 田辺元の思想形成に即して 【景山洋平】
第Ⅱ部 中国・台湾哲学と西洋哲学
王陽明・王龍渓・熊十力における良知の問題と現象学 唯識学からの回答の仕方 【倪梁康】
モナド論における論理の飛躍と朱熹の理気論の現象学的再建 気の現象学の必要性と可能性も合わせて 【方向紅】
家の現象学 ハイデガー、レヴィナスから儒家へ 【朱剛】
静寂意識と万物一体 【張偉】
革命文学論争における彭康 【鈴木将久】
近代中国哲学の中のベルクソン像 彭康を例にして 【王嘉新】
「他者理解」と「自己認識」 ここ四十年の中国の哲学研究の趨勢と論理 【陳徳中】
台湾哲学概論 【洪子偉】
第Ⅲ部 日本哲学の多様な展開
ディルタイ哲学と京都学派 西田幾多郎のディルタイ評価を手掛かりにして 【牧野英二】
海と島々からの日本思想史 和辻哲郎『風土』『鎖国』から 【合田正人】
詩人としてこの大地の上に住む 西谷啓治『寒山詩』の世界 【秋富克哉】
一九四〇年代前半の日本哲学の激変 多面的展開から一元化へ 【植村和秀】
西田幾多郎の「物」をめぐる思想 源了圓論文を承けて 【志野好伸】
日本哲学史展開期におけるフッサール現象学の受容 【浜渦辰二】
新儒家としての西田幾多郎 人格実現説をめぐって 【林永強】
御進講と日本哲学 【張政遠】
和辻哲郎の倫理学の出発点 大正期のニーチェ解釈との関連性から 【飯嶋裕治】
西田幾多郎と柳宗悦 ポイエーシスの哲学と民藝の思想 【太田裕信】
音をめぐる、めぐる音 立ち現われ一元論的音の世界 【佐藤麻貴】
和辻哲郎の倫理学における中国 【山村奨】
第Ⅳ部 中国と日本の思想的邂逅
桑木厳翼と中国哲学 【中島隆博】
近代日本における中国哲学の誕生明治十年代に東京大学で行われた諸講義を中心に 【佐藤将之】
儒教を媒介とするヨーロッパ・日本・中国の近代化について 【井川義次】
近世における 「漢神」 の日本化について 【呉偉明】
『善の研究』 と老荘思想の関わりについて 【王青】
第Ⅴ部 朝鮮・ベトナム哲学と知の越境
霊性から哲学へ 近代日朝における超越性の問題 【小倉紀蔵】
近代韓国における西洋哲学の受容と展開 【辛炫承】
国境を越えて旅する知二〇世紀初頭のベトナム、そして日本と中国からの出版物 【阮南】
フランス植民地期のベトナム知識人ファム・クインの「言語・文化ナショナリズム」 と西洋哲学思想観 【宮沢千尋】
植民地期ベトナムの思想状況と哲学の受容 『南風雑誌』を中心に 【廖欽彬】
あとがき──東アジアにおける哲学の命運 伊東貴之
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