東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎と大学院総合文化研究科准教授でEAA メンバーの國分功一郎氏が「<責任>の生成ー中動態と当事者研究」を新曜社より刊行しました。
<責任>の生成ー中動態と当事者研究
熊谷晋一郎、國分功一郎 著
【内容紹介】
わたしたちが<責任あるもの>になるとき――『暇と退屈の倫理学』以降、お互いの研究への深い共鳴と応答、そしてそこから発展する複数の思考を感受し合いながら続けられた約10年間にわたる共同研究は、堕落した「責任」の概念/イメージを抜本的に問い直し、その先の、わたしたちが獲得すべき「日常」へと架橋する。この時代そのものに向けられた議論のすべて、満を持して刊行。
【目次】
まえがき──生き延びた先にある日常 國分功一郎
序章 「中動態」と「当事者研究」
まずはじめに
「当事者研究」に先立つもの
「医学モデル」から「社会モデル」へ──パラダイムチェンジの背景
見えにくく、わかりづらい障害──私はいったい何者なのか?
「当事者研究」と「当事者主権」
症状と一緒に地域に出る
「外在化」と「仲間の力」
「免責」から「引責」へ
『発達障害当事者研究』の前提──ディスアビリティのインペアメント化
「まとめ上げ」と「絞り込み」の困難
〈この〉性と想像力
質疑応答
① 健常者とASDの人の住み分けについて
② ASDは精神分析で症状改善され得るか
③ 綾屋紗月さんはうつ病にならなかったのか
④ ASDの雇用について
⑤ ASDの中核にある障害について
⑥ 予測誤差が大きくなってしまう場合について
第一章 「意志」と「責任」の発生
使い勝手の悪い日常言語
『中動態の世界』と当事者研究
「能動」「受動」は新しい文法法則である
中動態の定義
中動態の三つの意味
能動態/中動態から、能動態/受動態へ
「意志」の誕生
意志と無からの創造
意志・選択・責任
行為のコミュニズム、ドゥルーズと「義の心」
「傷と運命」
「予測誤差」とトラウマ
記憶の蓋が開くとき
ヒューマン・ネイチャー/ヒューマン・フェイト
「12のステップ」というプログラム
権力と非自発的同意
内臓のアフォーダンス、中動態を生き続ける身体
中動態は救いではない
必然的法則と「自由」
コナトゥスと当事者研究
意志することは憎むことである
「私」と「傷」
「サリエンシー」と慣れ
統合失調症パラダイムの喪失
質疑応答
① 当事者研究がつらい
② 中動態の消滅と釈迦の誕生は関係あるのでは?
③ 能動・受動・中動と医学の歴史について
第二章 中動態と「主体」の生成
意志とは切断である
意思決定支援と欲望形成支援
「モル的」と「分子的」
「したい性」と「します性」、「うっかり」の効用
現象学と発達障害
他者の現象学と当事者研究
主体の生成と図式化
予測誤差と〈この〉性
予測・図式・想像力
「他者」はそんなにすごいのか
胎児の身体図式
コナトゥスと想像力
内臓への着目
質疑応答
① 「私」はどこから出てくるのか?
② コナトゥスは解体されるべきではないか?
第三章 自己感・他者・社会
自己を維持するにはコナトゥスに逆らわねばならない
コナトゥスと退屈しのぎ
消費と浪費、あるいはインプットとアウトプット
意識と自己感
原自己・中核自己・トラウマ
「自伝的自己」には他者が必要
無人島では自己が存在できない
他者との出会いの条件
多数派が多数派である理由
「キー・コンピテンシー」のネガとしての自閉症
求められる反中動態的な生き方
当事者研究と当事者運動
認知行動療法と当事者研究
ネオリベ的慎慮主義
傷の否認と消費行動
質疑応答
① 認知行動療法のプロセスは中動態的ではないか?
② 性・傷・中動態はどうかかわり合うのか?
③ 「傷」と「他者」について
第四章 中動態と「責任」
「意志」と当事者研究
「使う」という哲学
プラトン『アルキビアデス』を読む
プラトニズムの誕生
abuse とuse
水を味わう、身体を味わう
支配と自由
介助者運動と当事者主権
責任と応答
エビデンスと根拠なき「信」
「12のステップ」における変化のプログラム
「責任」は中動態の先にしかない
質疑応答
① 介助者とどのようにして親しくなるのか?
② ビジネスの世界の会話は能動態ばかりではないか?
③ 認知行動療法的恋愛本は危険ではないのか?
孤独、思考、言葉
おわりに 熊谷晋一郎