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美学のプラクティス

美学のプラクティス

東京大学総合文化研究科准教授でEAAメンバーの星野太氏が『美学のプラクティス』を水声社より刊行しました。

 

水声社ウェブサイトより

美学のプラクティス
星野太 著

【内容紹介】

美学、この不純なる領域
たえず懐疑的な視線にさらされ、「居心地の悪さ」を指摘されてきた学問領域、美学……。「崇高」「関係」「生命」という3つのテーマをめぐって、抽象と具体のあいだで宙吊りにされてきた美学の営為を問い直す、ひとつの実践の記録。美・芸術・感性を越境する批判的思考のきらめきが、いまここに。

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美と崇高――これら二つはたがいに相補的な美的範疇であるとされながら、崇高は最終的に他者への共感を呼び覚ますものとして(バーク)、あるいは理性への尊敬を目覚めさせるものとして(カント)、いずれも道徳的な範疇へとすり替えられてしまう。しかし、そこでひそかに隠されているのは、それでも人はその対象に惹きつけられてしまうという、ある種の疚しさではないか。
重要なのは、魅惑と拒絶が入り交じる、その曖昧で仄暗い感情から目を背けないことだ。その感情を抑圧しつづけるかぎり、人はカタストロフによる崩壊を埋めあわせるための、偽の紐帯に屈することをまぬがれない。ばらばらになった人々に連帯を呼びかける「美しい」言葉には、真摯なものといかがわしいものとがある。自然と人為の別を問わず、そうしたカタストロフのあとに、後者のたぐいの言葉がかわるがわる考案されていくさまを、われわれはこれまで何度も目にしてきたではないか。(「カタストロフと崇高」より)

【目次】

序論 美学、この不純なる領域 

第Ⅰ部 崇高
カタストロフと崇高
戦後アメリカ美術と「崇高」――ロバート・ローゼンブラムの戦略 
感性的対象としての数――カント、宮島達男、池田亮司 

第Ⅱ部 関係
ハイブリッドな関係性 
ソーシャル・プラクティスをめぐる理論の現状――社会的転回、パフォーマンス的転回
リレーショナル・アートをめぐる不和――ジャック・ランシエールとニコラ・ブリオー

第Ⅲ部 生命
生成と消滅の秩序 
生きているとはどういうことか――ボリス・グロイスにおける生の哲学
第一哲学としての美学――グレアム・ハーマンの存在論

初出一覧
あとがき