EAA特任研究員の田村正資氏が寄稿した『ユリイカ――特集=クイズの世界――』(2020年7月号)が刊行されました。5月18日に開かれた、EAA研究員の研究発表の場である「EAAゼミ」で草稿の発表もありました。
田村正資「予感を飼いならす」――競技クイズの現象学試論」『ユリイカ――特集=クイズの世界――』2020年7月号、青土社、2020年6月、95-103頁
(著者からのひとこと)
今回の論考では、ごくごくマイナーな競技である早押しクイズのトッププレイヤーたちが展開する技術的な理論と、人間の知性のはたらきについてドレイファスが提出した現象学的な仮説を突き合わせることで、早押しクイズにおける知性の特殊なひらめきの様相を捉えようと試みました。EAAゼミでは、特に早押しクイズの理論を解説する部分について、いろんな方から丁寧なご指摘をいただきました。おかげで、トッププレイヤーたちの早押しクイズに触れたことがないような人にも、彼らがいったいどんなことをしているのかをより精細に伝えられる論考になったと思います。
田村氏は巻頭対談の司会も務めています。本特集に関してご関心のある方はこちらのウェブページをご覧ください。
クイズを〈問う〉
クイズ番組から競技クイズまで、数多くのスタープレイヤーとクイズ王の鬼気迫る、それゆえにもっとも輝かしい瞬間に向かっていく挑戦が数年来注目を集めつづけている。ほとんど常識を逸した知識の体系を氷山の一角から世界を推し量るように鋭く展開し、ひらめきは問題文の文節どころか、発語を乗り越えようとする。クイズの至芸がひたすらに高められようとするいま、その営為を問う。
【目次】
❖対談
クイズ王とは何者なのか? / 伊沢拓司 徳久倫康 司会=田村正資
❖クイズの王権
知という海の波打ち際で / 宮崎美子
道なき道を行く / 田中健一
❖競技クイズの瞬間
クイズの持つ「暴力性」と、その超克――いかにしてクイズ文化を理解してもらうか / 伊沢拓司
競技クイズとはなにか? / 徳久倫康
予感を飼いならす――競技クイズの現象学試論 / 田村正資
❖クイズのつくりかた
「クイズ」と「謎解き」の交点 / 古川洋平
クイズの作家とクイズの会社 / 仲野隆也
クイズ×IQ――テレビクイズを中心に / 近藤仁美
❖クイズというユートピア
アマチュアクイズ大会文化 / 市川尚志
世界クイズ入門 / ワールドクイズインフォ
クイズとパズルと謎解き / 東田大志
❖創作
クイズ大好き捜査本部――真夏のmissing link / 青柳碧人
❖競技クイズの傍らに
7○3×の世界 / 杉基イクラ
❖クイズ作家とは誰か
私は一生食っていけるのか? / 矢野了平
クイズ作家の「作家性」はどこに宿るのか / 日髙大介
クイズ番組の魔力――“間違える”というロマン / 戸部田 誠
❖クイズ‐メディア史
クイズ番組の今昔 / 小川博司
クイズ・ショウと文学講師――一九五〇年代アメリカにおけるクイズ・メディア・人文知 / 河野至恩
「クイズに強い」とはいったいどういうことなのか?――クイズプレイヤーのテレビ史の試み / 太田省一
クイズ番組とテレビの果て / 遠藤知巳
❖クイズの掛詞
「クイズ」とかけまして…… / 古今亭今輔
クイズと短詩形文学の定型をめぐって / 佐々木あらら
栄光学園、ハンダノビッチ、そしてロラン・バルト / 小川 哲
❖クイズはなにをなすか
クイズの固定性と流動性 / 中田健太郎
クイズ番組のドラァグ・クイーン的解体 / 郡司ペギオ幸夫
答えは人生を変えない / さやわか
コンピューターとクイズの微妙な関係――質問応答システムの歴史から / 小山 虎
❖クイズのフロンティア
広大無辺な地下世界をわれらに垣間見せる「地下クイズ」 / 松本博文
開かれた知識とその価値 / 篠原かをり
❖That’s Q
問題がモンダイなのだ――問題学序説クイズ篇 / 山本貴光
日本仏教における「問答」の歴史と意味――徳一『真言宗未決文』を中心に / 亀山隆彦
質問を理解するとき、わたしたちはなにを理解しているのか?――質問の意味論入門 / 遠藤進平
❖連載
私の平成史 6 / 中村 稔
❖モノ・ローグ mono.logue*10
相槌 / 菊地信義
❖詩
逆さまの船 他一篇 / 友理
❖今月の作品
竹之内 稔・池田伊万里・梶谷佳弘・千種創一・酒井 創 / 選=和合亮一
❖われ発見せり
「フィクトセクシュアル」という視座 / 松浦 優