『尊厳概念の転移』が法政大学出版局より刊行されました。本書にはEAA院長の石井剛氏の論考「『科学と人生観』論争とその綻び──一九二〇年代中国における尊厳の位置」が収録されています。
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【内容紹介】
以前から「尊厳」という概念が西洋文明由来の特殊なものであることは指摘されてきた。本論集は、本居宣長、中江兆民、和辻哲郎、丸山眞男らの哲学思想から、仏教、イスラム教、朝鮮朱子学、東学、現代の韓国と中国、台湾の哲学思想、そして文学まで、非欧米圏の伝統思想を「尊厳」という観点から分析する。単なる語彙比較ではなく、その思想の内実に入り込み「人間観」の再構築を目指す。
【目次】
編者前書き 比較研究による人間観の再構築に向けて(小島毅)
第Ⅰ部 文化伝統のなかの人間観
1 日本群島と総合的人間(小倉紀蔵)
2 伝統思想における尊厳概念──十七・十八世紀の日本思想とその方法から(清水正之)
3 「揺れる情(こころ)」の緩和ケア──病棟で本居宣長を考える(土屋宣之)
4 人間と動物の本性は同じか異なるか──朝鮮朱子学の人物性同異論争(金光来)
5 イスラム教における人間観──カラーマと義務賦課の観点から(菊地達也)
6 イスラームにおける尊厳と尊厳死(消極的安楽死)──ファトワーの分析を中心に(青柳かおる)
第Ⅱ部 尊厳概念の転移(日本)
1 中江兆民思想における尊厳と自由・平等観──フランス共和主義の導入を中心として(エディ・デュフルモン)2 近代仏教における縁起と尊厳(前川健一)
3 〈弱さ〉の尊厳の提起──日本の「私小説」における日常生活の実相に導かれて(ギブソン松井佳子)
4 和辻哲郎における尊厳概念──人間存在の否定性(犬塚悠)
5 自由と徳性──丸山眞男の尊厳認識(商兆琦)
第Ⅲ部 尊厳概念の転移(東アジア)
1 東学の気化的人間観(趙晟桓)
2 朴鍾鴻哲学の創造的人間観における尊厳の問題(郭旻錫)
3 唐君毅の「自作主宰」──人格尊厳の根拠として(小島毅)
4 張君勱の憲法制定活動からみる「人間の尊厳」の思想的基盤(中村元哉)
5 周作人「人間の文学」に見る中国近代知識人の「人間」観(牧角悦子)
6 「科学と人生観」論争とその綻び──一九二〇年代中国における尊厳の位置(石井剛)
7 日本統治時代の台湾人の尊厳とは?──『台湾民報』系の言論を中心に(陳文松/原口直希゠訳)
8 戦後台湾における尊厳の概念史(陳建守/古谷創゠訳)
9 教育学者張彭春の思想過程とその「世界人権宣言」に対する影響(一九二三~一九四八)(劉蔚之/胡華喩゠訳)
編者後書き 「尊厳学」の中の非欧米圏(加藤泰史)
執筆者・訳者紹介