総合文化研究科教授でEAAメンバーの伊達聖伸氏が共編書『世俗の新展開と「人間」の変貌』を勁草書房より刊行しました。
詳細はこちらをご覧ください。
西洋における無宗教や無神論の含意や地域特性を解明するとともに、世俗の時代を支えてきた「人間の条件」を問い直す。
【内容紹介】
宗教的なものと世俗的なものの再編の諸相を描くシリーズ「西洋における宗教と世俗の変容」第3巻。「ポスト世俗」とも言われる時代の「世俗」「無宗教」「無神論」の意味合いを地域ごとの特性とともに考える。また世俗の時代を支えてきた西洋キリスト教白人男性中心主義的「人間」概念の変貌を浮き彫りにする。
【目次】
シリーズ巻頭言
総 論
西洋における宗教と世俗の変容──世俗の新展開と「人間」の変貌[伊達聖伸・木村護郎クリストフ・小川公代・土屋和代]
一、「ポスト世俗」時代における「無宗教」関連概念の分節化
二、多様な「西洋」諸地域における「世俗」の諸相
三、人間概念の揺らぎ──自然・動物・人種・女性・機械
各 論
〈第Ⅰ部 世俗主義の諸相と「宗教」のゆくえ〉
第1章 アランの幸福論とヴェイユの不幸論──世俗と宗教は糾える縄の如し[伊達聖伸]
はじめに
一、意志による幸福と不幸の発見
二、世俗と宗教の絡まり合う信仰
三、新しい人間
おわりに
第2章 「宗教化」する無宗教──アメリカ合衆国のポスト世俗[佐藤清子]
はじめに
一、縮減的宗教化の進展
二、拡散的宗教化とその限界
三、アメリカのポスト世俗と宗教化
第3章 ソ連時代のライシテと「戦術」としての宗教実践[井上まどか]
はじめに
一、ソ連時代の「宗教からの脱出」──二度にわたる反宗教政策・無神論教育の展開
二、「戦術」としての宗教実践
おわりに
第4章 シオニズムとイスラエルにおける世俗主義と宗教復興[鶴見太郎]
はじめに
一、シオニズムやイスラエル建国初期の世俗主義
二、シオニズムやイスラエル国家に対する宗教的ユダヤ人の態度
三、イスラエル建国後の二つの傾向──宗教回帰と世俗化
四、ユダヤ教に回帰する根本的要因
おわりに
〈第Ⅱ部 「人間」概念の揺らぎと「宗教/世俗」の再編〉
第5章 キリスト教の緑化?──ドイツの教会の動向から[木村護郎クリストフ]
はじめに
一、環境問題への宗教の介入をめぐって
二、環境問題に関するドイツの教会の位置づけ
三、教会の役割に関する自己認識
四、教会の三つの役割の実際と課題
おわりに
第6章 誰が世界の終わりに向き合うのか──人新世を生き抜く[増田一夫]
一、時を渡るアポカリプス
二、「啓蒙の申し子」の黙示録
三、破局の時間性と脱抑制のプロセス
四、資本主義とテクノ・メシアニズム
五、「人間」──死ぬことを通じて学ぶ
第7章 黒人神学とフェミニスト神学をつなぐ・ひらく──パウリ・マリーの思想と運動[土屋和代]
はじめに
一、境界に立つ──パウリ・マリーの生い立ち
二、「ジェーン・クロウ」を問う
三、聖職者の道へ──「信仰の危機」と「実験」
四、制度的差別を問う──ジェネラル神学校(GTS)での闘い
五、黒人神学とフェミニスト神学をつなぐ・ひらく
おわりに
第8章 ポストヒューマンとAI少女──イシグロの『クララとお日さま』[小川公代]
一、AIをめぐる想像力とグレタ・トゥーンベリ
二、パターン認識──人間の脳とAIが混ざり合う世界観
三、はざまに滑り込む──多孔的な自己と“逃走する”少女たち
四、『クララとお日さま』におけるAI少女
五、他律的で脆弱な自己とは