総合文化研究科教授でEAAメンバーの伊達聖伸氏が共編書『カトリック的伝統の再構成』を勁草書房より刊行しました。
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世俗化が進行するにつれ「宗教的伝統」はどのように変化しているのか。西洋におけるカトリック的伝統の再構成を事例として解明する。
【内容紹介】
宗教的なものと世俗的なものの再編の諸相を描くシリーズ「西洋における宗教と世俗の変容」第1巻。第二ヴァチカン公会議以降、カトリック地域では世俗と宗教の関係や信仰の条件が変化し、伝統宗教が自明でなくなる一方、その再構成も進んでいる。そうした現状を、カトリックの現代西洋的なあり方や地域的な多様性を例に分析する。
【目次】
シリーズ巻頭言
総 論
西洋における宗教と世俗の変容――カトリック的伝統の再構成[伊達聖伸・渡辺優]
一、カサノヴァ『近代世界の公共宗教』の議論を踏まえつつ超え出ていくために
二、カトリシズムの歴史的変化――一九六〇年代を一つの分水嶺とみなして
三、カトリシズムの地理的多様性――ヨーロッパ、北米、南米
四、国際政治とグローバル化――「普遍教会」はどこへ向かうか
各 論
〈第Ⅰ部 世俗の知とカトリックの知の交錯〉
第1章 ジャン・セギーとフランスの戦後宗教社会学[田中浩喜]
はじめに――ジャン・セギーとは何者か
一、対象を拡大する――セクトと修道会
二、理論を輸入する――ウェーバーとトレルチ
三、概念を洗練させる――「ユートピア」の宗教社会学
四、観点を逆転させる――「メタファー宗教」と「宗教的近代」
おわりに――荒野を流浪する
第2章 ケベックにおける宗教学の誕生――フランス宗教社会学との交流を背景として[伊達聖伸]
はじめに
一、フランスにおける宗教学の誕生とカトリック的宗教社会学の盛衰
二、ケベックにおける宗教研究の刷新
三、UQAMにおける「宗教学」(religiologie)の誕生
四、ケベックにおける宗教研究の多様性――モントリオール、ケベック市、シェーブルック
五、一九七〇年代以降のケベック宗教社会学――アンリ・デロッシュの受容をめぐって
おわりに――神学部が閉鎖されるなかでの宗教研究
第3章 イタリアのカトリック的伝統における宗教史学――ペッタッツォーニの「信教の自由」論を中心に[江川純一]
はじめに ペッタッツォーニの転回――同時代イタリアへの批判的視点
一、国際宗教史学会議ローマ大会(一九五五年)をめぐって
二、講演「イタリアにおける教会と宗教生活」(一九五七年)
三、講演「イタリアにおける信教の自由のために」(一九五八年)
四、ペッタッツォーニ以後
おわりに
〈第Ⅱ部 カサノヴァ「公共宗教」論の見直し、その限界と可能性〉
第4章 ポーランドの政教関係から見た公共宗教論の現在地――民主化運動のレガシーの行きつくところ[加藤久子]
はじめに
一、「民主化の第三の波」におけるカトリック教会
二、カトリック保守派による政治活動
三、人工妊娠中絶とカトリック教会
おわりに
第5章 現代アルゼンチンにおけるカトリック教会と国民宗教意識[渡部奈々]
はじめに
一、カトリック教会の公共的役割
二、教皇フランシスコと社会教説
三、教会と国民意識のずれ
四、民とはだれか
五、喪失する役割
おわりに
第6章 権威主義体制期ポルトガルにおけるカトリック教会と「準反対派」――フランシスコ・サ・カルネイロの活動を中心として[西脇靖洋]
はじめに
一、権威主義体制期の政教関係
二、「準反対派」とカトリシズム
おわりに
〈第Ⅲ部 グローバル時代のカトリック、普遍主義のゆくえ〉
第7章 ダニエル・マニックスと脱植民地化、二つの世界大戦、冷戦の中のカトリック教会[小川浩之]
はじめに
一、ナショナリズムと脱植民地化
二、二つの世界大戦
三、冷戦と「第三の道」
おわりに
第8章 カトリック的「世界市民」をつくる――学生・知識人信徒による国際団体「パクス・ロマーナ」の活動をめぐって[渡邊千秋]
はじめに
一、創立――第一次世界大戦前後
二、深化――第二次世界大戦期
三、拡大――第二次世界大戦後
四、頂点――第二ヴァチカン公会議
五、分断――公会議後の世界
おわりに
第9章 イエズス会士セルトーと危機の時代の教会論――「第三の人」(一九六六年)をめぐって[渡辺優]
はじめに
一、「第三の人」とセルトー
二、労働者たちの祈り――「奇妙な移動教会」
三、場所を持つこと
四、ボカン修道院とセルトー――「人間の経験の大海」に臨む場所
おわりに