開催趣旨
東アジア前近代の地方史・地域史・区域史は、ローカルかつドメスティックな性質を帯びる研究分野であることから、一国史の文脈で研究されがちです。ローカルな歴史を一国史の枠組みを越えて位置付けるためには、対外交流史だけでなく、比較史も有効な方法と考えられます。地方の社会集団の行動と論理、および彼らが織りなす社会構造や国家との関係を、東アジアの視野から比較して捉えることで、接続しないかにみえる前近代の地方の歴史的諸事象を再評価することが可能なのではないでしょうか。
無論、地域を越える試みは日本・海外を問わずこれまでにも行われてきましたが、地域を越える議論から更に一歩進んで、言語圏を越える意見交換も重要と思われます。本シンポジウムは、15から17世紀の中国と日本を比較対象としますが、その際に浮上する課題として、日本における日本中世史研究と明清史研究、および中国における明清史研究という三者の研究背景と軌跡が異なる点が挙げられます。加えて、中国と日本では史料のあり方と残り方も異なります。こうした相違を意識しつつ、地方社会・地域社会は、日本語圏と中国語圏でそれぞれどのような文脈で研究されてきたのか、それぞれの分野で扱われる史料はどのような特徴があるのかに留意しつつ、比較の方法を模索するのが本シンポジウムの目的です。
こうした問題意識のもと、中国の中国区域史研究者として趙世瑜氏(北京大学歴史学部)と賀喜氏(香港中文大学歴史学部)、日本の日本地域史研究者として湯浅治久氏(専修大学文学部)をお招きし、それぞれ15から17世紀の中国と日本の地域社会について報告していただきます。さらに岸本美緒氏からは、日本の明清史研究における地域社会研究の特徴や比較史の視点についてコメントしていただきます。
東アジア前近代の地域社会という共通の話題を通して、言語圏と地域を越える対話の場になれば幸いです。皆さんのご参加をお待ちしております。
開催時間・会場
2024年3月11日(月)10:30~17:30(予定)
東京大学東洋文化研究所大会議室(現地開催のみ。会場の座席数に限りがありますので、定員に達し次第締め切らせていただくことがあります。)
使用言語:日本語と中国語(通訳あり)
要事前参加登録(2024年3月8日(金)12時までこちらからお申込ください:https://forms.gle/1ZCaHLttQ6x7k9Aw9 )
報告
近年来中国的民间文献收集和区域社会史研究(近年の中国における民間文献の収集と区域社会史研究)
趙世瑜(北京大学歴史学部教授)
祭:卡里斯马的寻常化 (祭祀―カリスマの日常化―)
賀喜(香港中文大学歴史学部准教授)
日本中世の地域社会―中間団体・社会的権力・信仰―
湯浅治久(専修大学文学部教授)
コメント
岸本美緒(お茶の水女子大学名誉教授)
司会
黄霄龍(東京大学東洋文化研究所・東アジア藝文書院特任研究員)
主催
東京大学東アジア藝文書院潮田総合学芸知イニシアティヴ
East Asian Academy for New Liberal Arts, The University of Tokyo
Ushioda Initiative of Arts