イベント
学術フロンティア講義「30年後の世界へ」

第7回 学術フロンティア講義
「30年後の世界へ——「共生」を問う」

第7講 5月30日(月)

田中有紀(東洋文化研究所、中国哲学)
「類を違える物と共に生きる世界:中国思想から考える環境倫理」

もし中国思想に、新しい環境倫理の構築に寄与する可能性があるならば、それは何だろうか。清末の思想家・康有為は、人間と動植物は本質的に同質であると考え、同質であるにもかかわらず人間が動物を殺す理由は、自分と類を違えるから、つまり形体が異なるからに過ぎないと考えた。康有為が理想とした大同の世では、肉に替わる食物を生み出す技術によって動物を殺す理由は消滅する。しかし一方で私たちは、顕微鏡という別の技術を通して、無数にうごめく生物の存在に気付かざるを得ず、完全な不殺生は不可能だという事実を突きつけられる。このジレンマにどのように向き合うのか。中国思想における人間と技術の思想を通して考えたい。