イベント
学術フロンティア講義「30年後の世界へ」

第13回 学術フロンティア講義
「30年後の世界へ——空気はいかに価値化されるべきか」

第13講 7月14日(金)

石井剛(総合文化研究科・東アジア藝文書院)
「空気の哲学としての新しいリベラルアーツへ——責任と希望の学問」(まとめに代えて)

この講義が主題にしてきた「空気の価値化」とは結局のところ、何にどのような価値を賦与していこうとすることなのだろうか。わたしたちは価値とはそもそも何なのかを問うことから始め、空気というそこに確固として存在しているのに見ることも分割することも容易ではない物質を、空間や空気感という五感ひいては第六感の対象として捉えようとしてきた。しかし、空気は同時に大気であり、わたしたちも含まれる生態系全体のバランスを保つ動態的存在として、いまわたしたちを危機に陥れているという厳然たる事実にも向き合わざるを得ない。このあまりにも具体的でかつあまりにも捉えどころのない対象は、結局のところわたしたちの生物としての生命と人間としての生命を共に可能にするために不可欠な基本要素なのだ。すなわち、わたしたちが空気を考え、何らかの価値を見出そうとする行為自体は、ひとつの哲学的プロジェクトにほかならない。  今回の授業では、改めて空気がいまわたしたちに迫っている課題の危機的な現実に立ち返りながら、危機を希望に変えていくための学問の可能性を考えてみたいと思う。