日時:2021年7月15日(木)14時~16時
会場:オンライン(Zoomミーティング)
申込方法:登録フォーム ( https://forms.gle/8ib1NeLHWvdVDTa46 ) より、7月14日までにお申し込みください。7月15日正午までにZoom入室用URLをお送りいたします。
題目:江永の経学における鐘制:聖人と工人、時代と地域、そして遺物
発表者:田中 有紀(東京大学東洋文化研究所・准教授)
司会:中島 隆博(東京大学東洋文化研究所・教授)
要旨:
本報告では皖派の祖とされる江永(1681-1762)の、『周礼』考工記・鳧氏が描く鐘制に対する注釈をとりあげる。江永が構想した鐘制は、鳧氏の鐘制に図を施し注釈を行った戴震や程瑤田らに大きな影響を与えたという。
江永の鳧氏への注釈は、彼の著作である『律呂新義』と『周礼疑義挙要』の両書に収録されている。『律呂新義』は「律呂」を冠することからもわかる通り、主に音律学を論じ、その附録として「鳧氏注疏考誤」を収録している。彼は、理想とする音律理論を河図洛書に基礎付け聖人の制度とみなす一方、実際に音楽を演奏する際には、儒家の理論を過信せず、楽人の技術を重んじ、古の制度を無理に復元するのではなく、今の制度を積極的に利用しようとした。江永の鐘制は、彼のこのような音律学の中でどのように位置づけられるのだろうか。
また『周礼疑義挙要』では、『周礼』考工記の注釈のひとつとして、鳧氏も収録されている。本報告では、江永にとって、『周礼』とは、考工記とは何だったのかを考えながら、彼の鐘制を読み解く。彼は、斉の工人の記録として考工記を捉えていた。東周の斉にいた工人の「技術」の記録として鐘制を考証することは、そもそもどのような意味を持つのだろうか。
以上の分析により、江永の経学における鐘制の特徴を明らかにした上で、改めて戴震や程瑤田が考証した鐘制と比較したい。戴震や、特に程瑤田が意識するのは、文字で書かれた書物だけではない。当時各地で出土していた、様々な時代の鐘の遺物も重要な存在である。金石学の発展を背景に、経学にも遺物が取り入れられるようになった。本報告ではこのような経学の新しい展開も視野に入れながら、江永の鐘制が持つ意味について再考する。
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