お知らせ
2021.06.14

【学生募集】2021年 東京大学―北京大学 東アジア藝文書院 Summer Institute募集

2021年 東京大学―北京大学 東アジア藝文書院 Summer Institute募集要項

東アジア藝文書院(EAA)では、北京大学との合同サマー・インスティテュートを毎年実施しています。その特徴は、(1)東京大学と北京大学の教員が毎年交互に古今東西の古典(Classics)をめぐって,参加者との活発な議論を交えた集中講義を行うこと、(2)講義やテクストの読解から導いた問いについて、参加者自らがグループワークを通じて討論を行い、その結果を皆で共有すること、という2点に集約されます。3回目を迎える今年は、東京大学から、石井菜穂子教授(本学理事)と佐藤麻貴特任准教授(EAA)が講師として登壇します。テーマは「Value and Value-ing: Visiblizing (the) Invisible」としました。
人新世とも呼ばれる現代において、わたしたち人類は気候変動に代表されるように、自らが生産したものや、自らの経済活動によって地球環境に深刻なダメージを与え、また、自らの生存危機に直面する事態を招いています。そうした近代のもたらしたパラドックスの只中で、わたしたちは「価値」という概念を別の角度から考えてみることを迫られています。「価値」はもともと存在するものではありません。もとは有価値であるとはみなされなかったモノに付随する何らかの概念の変容に伴い、あたかもそのモノに価値があるかのように見なされることによって、次第に無価値であったモノは有価値なモノとして存在するようになります。とりわけ近代以降になると、資本主義経済の発展に伴い、貨幣によって換算可能な交換価値が過度に重視され、市場におけるコモディティ取引において、更なる利潤創出の契機を提供するようになりました。しかし、こうした資本主義経済モデルにおける近代的価値付けの概念では、価格による価値付けが成されていないために、資本主義システムから疎外されているモノがあります。例えば、大気や淡水、熱帯雨林のような地球に生きる生命にとっての共有財産は、従来、無償であるモノとされてきました。資本主義システムを採択し続ける以上、今後は、そうした生命にとっての共有財産を、そもそも価値化(あるいは、価格付け)の対象であるとみなしてよいのかどうかという問題が当然生起するでしょう。また、仮に価値あるモノとして、それらを把握するとしても、その際に「価値」概念をこれまでと同様に価格付けだけで理解し、取り扱うことで人新世の危機を回避することは果たして可能でしょうか。グローバル・コモンズや社会的共通資本といった考え方は、1970年代頃から活発に議論されており、決して新しい概念ではありません。しかしながら、こうした問題は、21世紀に入った今日において、未だに本質的な解決を見いだせない状況にあります。改めて、価値と価値化、グローバル・コモンズについて再考するということは、共生成し変化し続ける新しい世界のあり方を具体的に想像することでもあります。
本サマー・インスティテュートでは、こうした近未来の問題について、未来社会においてアジアを舞台に世界を牽引するであろう両大学の学生たちに、徹底的に議論してもらいます。本インスティテュートの最大の狙いと目的は、参加者の一人一人が、未来を見据え、容易に答えの見つからない問いを共有し、共に深く考え、議論することを通して、よりよき世界を共に創っていくための息の長い友情を、日中間の学生諸君に育んでもらうことです。
なお、本インスティテュートは、北京大学とオンラインで接続します。本学からの参加者は駒場に集まって行うハイブリッド形式を取りますが、事情によりキャンパスに来られない方はオンライン参加も可能とします。

 

  1. プログラム内容 プログラムテーマ“Value and Value-ing: Visiblizing (the) Invisible”
    ・東京大学主催の講義(英語)※内容は下記参照
    ・北京大学の学生10名と本学生10名をグループごとに分け、テーマについてディスカッション
    ・グループごとに発表(英語)
  2. 対象となる学生
    ・東京大学に所属する学部または修士の学生。
    ・本プログラムの講義や発表は英語で行われるため、講義への参加及びコミュニケーションに十分な英語の能力を有する者。
  3. 期日 2021年9月5日(日)15:00-16:30アイスブレイクセッション
     9月6日(月)13:00-17:40レクチャーセッション
              レクチャー1:佐藤麻貴(EAA特任准教授)、蒙天宇(UNDP, TBD)
              レクチャー2:石井菜穂子(東京大学理事、未来ビジョン研究センター・ダイレクター)
     9月7日(火)14:00-17:00 グループプレゼンテーションセッション
    ※全日参加すること。
  4. 場所 対面とオンラインのハイブリッド形式にて行う。
    駒場キャンパス101号館 EAAセミナー室 
  5. 募集人員 10名
  6. 申請方法 下記のエントリーフォームより応募してください。
         2021 EAA Summer Institute Entry Form
  7. 申請期限 2021年7月5日(月) 午前9:00(厳守)
  8. 選考方法 書類審査及びオンラインにて面接を行う予定。日程は追って通知する。
  9. 留意事項  
    ・プログラム終了後には報告書の提出を求める。
    ・写真・映像・音声などを記録すること、および、その記録されたものをEAA広報活動等で使用する可能性があることを了承すること。
    全日参加、報告書提出に加えて、Aセメスターに開講される教養学部(後期課程)「東アジア教養学実習(4)」を履修することにより、1単位を取得することができる。
  10. オリエンテーション 採用者を対象に事前説明会をオンラインで8月に実施予定。

 

 [本件についての問い合せ先]

東京大学東アジア藝文書院(EAA)https://www.eaa.c.u-tokyo.ac.jp/

E-mail:info$eaa.c.u-tokyo.ac.jp ※ ($)は@に置き換えて下さい。

 

Lecture 1 
Prof. Sato Maki (EAA, UTokyo)& Ms. Meng Tianyu (UNDP)
Reading Material:Immanuel Kant, “Perpetual Peace”
2021年に入り、コロナ前に見え隠れてしていたNation-state based conflict の芽がいたるところで萌芽していることが、随所で確認されるようになっている(イスラエル・パレスチナ紛争、Yemen内紛等)。当たり前のように、日常において享受しているものの価値とその尊さにつき、改めてその価値を問い直し、価値づけの根拠を鍛え直す作業を通して、本講義では、次のことを考えてみたい。1)21世紀において、享受している平和、移動の権利、思想(言論)の自由の背景にある、本質的に大事にしなくてはならない人間らしいモノ、あるいはその価値とは何か。また、2)そうした人間らしいモノの価値づけとその根拠の基礎付けを、ヒュマニティーズからどのように再定義し、提示することができるのか。更に、3)Eco-system Servicesに代弁されるような、私たちがあたかも、当たり前に、ただ同然として享受している自然の恵みとその価値を、いかに価値づけ、いかに未来世代に受け渡していくのか。
実際にUNの現場で働いているMs. Meng(UNDP)と、働いたことのある佐藤(UNESCAP)が、コスモポリタン的な視座に立った上で上述の三つの問いについて、テクストの読解を絡めつつ、現場の観点との乖離を捉えながら、それらを21世紀の私たちがどう解釈し、価値の基礎付けをどう探るのか、中日の学生と共に考えてみたい。

Lecture 2
Prof. Ishii Naoko (Executive Vice President of UTokyo, Director of Institute for Future Initiatives, UTokyo)
Reading Material:Elinor Ostrom, “Governing the Commons”
内容は決まり次第お知らせします。

ポスターのダウンロードはこちら