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2022.04.15

映画『籠城』学内上映会(2022年3月)

約束どおり、3月に映画『籠城』を仕上げることができた。試写会後、月末に計4回、駒場キャンパスで上映会を行った。EAAの外部、さらには東京大学の外部から、延べ130名超の方々にご覧いただいた。そのことを素直に喜びたい。3月26日(土)と3月27日(日)は、試写会と同じくアドミニストレーション棟3階学際交流ホールでの上映だった。3月30日(水)と3月31日(木)は、900番教室での上映だった。作中にも登場するかつて倫理講堂と呼ばれた建物である。1968年の三島由紀夫の演説で知られるが、1945年8月15日、駒場に残った教職員と学生たちが玉音放送を聞いた空間でもある。

各回、質疑応答も含めて1時間ほどのアフタートークを行った。寮歌アレンジ、声の演出、研究対象との距離の取り方など、コロナ禍でのリモート中心の進行について、制作陣側さえ、ほとんど初めて言葉を交わした部分もあっただろう。

初見の観客たちからは、賛否両論といった枠組みには留まらない多数のご感想、ご批判、ご質問を頂戴している。駒場寮問題を想起した、声が速くて聞き取りづらかった、男女混成のポリフォニーの意図はどのようなものなのか、学生運動の時期の駒場を扱わなかったのはなぜなのか、これはアイデンティティ・ポリティクスなのではないか、作品の意味に説得されない、なにを届けたいのかわからない、夢の中にいるようだった……。

感性のぶつかりあいを示すダイレクトな反応は真摯に受け止めたい、そのように思いながら、ひとつ、作品が届くことと作中の声が届くこととは別に考えるべきだろうという感覚が去来している(自分自身が、ブランショ研究者だからかもしれない)。「正しく記録しなければならない」と囁きこだまする声たちは、アイデンティティの揺らぎをめぐる問答に限定されるような、他者に無条件に届くことに甘える生ぬるい自意識の産物では決してないのだから。

報告者:髙山花子(EAA特任助教)