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2024.04.20

【報告】共生会議(バーグルエン中国センター主催・EAA共催)

【報告】共生会議(バーグルエン中国センター主催・EAA共催)

 2024年329日(金)と330日(土)、「共生」国際学術シンポジウム(Gongsheng/Kyōsei and Convivialism: Forging a Planetary Philosophy and Ethics?が東京大学駒場キャンパス18号館ホールで開催された。本シンポジウムはバーグルエン中国センター(Berggruen Research Center at Peking Universityの主催、東京大学東アジア藝文書院の共催により実現されたものである。シンポジウムでは英語、中国語、日本語という三つの言語が使用され(同時通訳あり)、「共生」というテーマをめぐって様々な角度から重厚な議論が展開された。

 1日目の329日(金)9時から、まずは総合文化研究科長の真船文隆氏(東京大学)が開会の辞を述べ、次にバーグルエン中国センター主任の宋冰氏(バーグルエン研究所)が本プロジェクトの背景を紹介した。その後、中島隆博氏(東京大学)より“Our Kyōsei: What the Personal Works”と題した基調講演がなされた。

左:真船文隆氏         右:宋冰氏

中島隆博氏

 続いて、1つ目のパネル“Exploring the Philosophical Foundations of Gongsheng/Kyōsei and Convivialism”では石井剛氏(EAA院長)が司会を務め、石井公成氏(駒澤大学名誉教授)から“Understanding the Limits of the Symbiosis: MIYAZAWA Kenji’s Theory of Symbiosis as a Clue”、龔雋氏(中山大学)から“The Concept of Gongsheng in Daoist Philosophy: Examples from Laozi and Zhuangzi”、フランク・アドロフ氏(ハンブルク大学)から“Overcoming Naturalism: Conviviality and Symbiosis”と題した発表が行われた。宮沢賢治の共生思想、老荘思想における共生観、人間と非人間の共生などが論じられていた。


左から:石井公成氏、龔雋氏、フランク・アドロフ氏

 昼休みを経て、2つ目の基調講演“Convivialism (and Symbiosis) in the Face of Struggles for Recognition”はアラン・カイエ氏(パリ第 10大学)よりなされた。

アラン・カイエ氏

 その後、2つ目のパネル“Disasters and Revivals”では龔雋氏の司会のもと、頼錫三氏(國立中山大學)が“Daoist Technological Critique and Gongsheng Transformation: From ‘Dominating Over Things by the Self’(以我宰物) to ‘Matching Tian with Tian’(以天合天)”、白永瑞氏(ペク・ヨンソ/延世大学)が“Co-Becoming Humanities on the Way to Alternative Civilization(s): Navigating the Age of the Great Transition through Knowledge Restructuring,”、石井剛氏が“The Logos for Human Co-Becoming—Toward the Post-2050 Era”、星野太氏(東京大学)が“The Parasitic: Co-Existence/Para-Existence”と題した発表を行った。道家の批判的技術論、「共生人文学」の理念と条件、共生にとっての「復興」の意義、「共生」から「寄生」への概念的転換などについて議論が交わされた。


上(左から):白永瑞氏、星野太氏
下(左から):頼錫三氏、石井剛氏

 2日目の3月30日(土)9:00からは、3番目のキーノートスピーカーのマルクス・ガブリエル氏(ボン大学)より、”Human Co-Becoming, Anthropological Diversity, and the Age of a New Enlightenment”と題した発表があった。

マルクス・ガブリエル氏

 その後、最後のパネル ”Gongsheng/Kyōsei and Convivialism: A Philosophy Shared by Mankind in the Planetary Era?” に移り、田馨媛氏(バーグルエン中国センター)の司会のもと、ロジャー・エイムズ氏(北京大学)が”The Confucian Values of Relational Equity and an Achieved Diversity: From Convivialism to Conviviality”と題して、マーク・マコナギー氏(國立中山大學)が”Chinese Neo-Traditionalism and the Question of Co Becoming in the 21st Century: From Capital to the Unselfish Heart”と題して、展翼文氏(北京師範大学)が” Reality in Co-Becoming: On the Metaphysics of Interperspectivality”と題して、任暁氏(復旦大学)が”The Gongsheng Theory of International Relations”と題して発表した。前日の議論にもときおり立ち返るかたちで、儒教における生生論的思考(zoetological thinking)、梁漱溟による儒教の基礎概念再評価、分析哲学における単数性と複数性、国際関係論の視野からの差異の絶対的肯定と共生の希望といった論点が提示され、コンヴィヴィアリティと結ばれて議論された。

上(左から):展翼文氏、ロジャー・エイムズ氏
下(左から):マーク・マコナギー氏、任暁氏

 午後からの最後のセッション” Past to Future: Reflecting and Envisioning Together”では、小林康夫氏(東京大学名誉教授)から”One Singular Moment over the North-Pole Area: My Hope for Philosophia, Like a Very Far Star”と題した日本語演説があり、共生概念を自明のものとするのではない議論の可能性が問われ、全体を批判的に振り返り、科学と技術が圧倒的となっている現代にどう新しく思考するのか、問題提起がなされた。

小林康夫氏

 その後、石井剛氏の司会のもと、総合討論に移り、登壇者のすべてが発言し、ニコラス・バーグルエン氏(バーグルエン研究所所長)の挨拶によって閉会した。

ニコラス・バーグルエン氏

 要約することが困難な濃密な2日間だったが、たしかなのは今回の集まりが始まりとなり、新たなネットワークが生まれてゆくことが予感されたことだと思う。
 貴重な機会を実現するにあたって、バーグルエン中国センターのスタッフの方々、そしてEAAのスタッフには多大な尽力をいただいた。通訳の方々にもたいへんな尽力をいただいた。心から感謝したい。

報告:髙山花子(EAA特任助教)、郭馳洋(EAA特任研究員)
写真:三野綾子(東京大学学術専門職員)、ニコロヴァ・ヴィクトリヤ(EAAリサーチアシスタント)、林子微(EAAリサーチアシスタント)、横山雄大(EAAリサーチアシスタント)、陳希(EAA特任研究員)
※ブログ報告と写真撮影の担当者の所属・身分はイベント当時のもの。