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岩元 勇都さん
1時間はとても長く、半年はあっという間に過ぎていきます。
こんにちは。EAAユース4期生、医学部医学科の岩元勇都です。
EAAでは、昨年、今年と続きこれまでに北京大からの留学生3人のチューターを務めてきました。毎週集まってご飯を食べ、近況を聞き、日本語を教え、中国語を習い、同じ本を読み、希望とは何か?について論じ合い、ときには電車に揺られて一緒に遠出をしました。深大寺で秋を見つけ、鎌倉では冬の海を見ました。EAAの先生方も含めた大人数でのフィールドトリップでは、山中湖や足尾を訪れ、三島由紀夫や日本の近代化について話しました。
実は私は普段本郷にいることが多く、駒場で過ごすことの多い留学生と毎日会うことは難しかったのですが、その中でもお互いに頻繁に連絡をとることができ、むしろ本来チューターとして学業や生活の手伝いをするはずの私の方が楽しんでいたり、助けられていたりする瞬間が多かったように思い出します。
EAAの交換留学は基本的にセメスターごとに行われるので、およそ半年弱で北京大生たちは中国に帰っていくことになります。日本に来た最初の日に三鷹寮に入る手続きを手伝ってから、期末の最後のレポートを書き終えるまで、あっという間に半年が過ぎたのだと、いつも驚かされます。皆さんが帰国してしまうことそれ自体すごく寂しいものなのですが、普段よく連絡をとっているだけに、1時間だけの時差で変わる生活の時間の差を痛感する瞬間がやってきます。同じ学校のリズムの中にいた頃とは、起きているべき時間や寝ているはずの時間、お昼の時間がほんの少しずれていて、ちょっとしたやり取りのリズムの変化から、その小さい差を超えたズレを感じる瞬間があります。
2023年夏、石井先生と共にEAAの学生として北京を訪問した帰り、石井先生は「小さな歓びを掴み離さないでいること」についてお話しされていました。こうして会うことができた学生たちとの歓びの時間を大事にとっておくことができるようになった気がします。
そして実は、今年(2024年)の夏は、自分の足で北京を訪れ、勉強中の中国語をためしながら、なんとか北京大の学生たちと再会してくる予定です。東京でチューターをしていた皆さんに、今度は北京で会うというのはなんだか不思議な気持ちになります。
EAAの授業としては、白佐立先生の2022年度Aセメスターに履修した白佐立先生の社会・環境・健康と東アジアⅡ「生活誌ドキュメンタリー@高知」という授業を挙げたいです。高知市では毎週、定期市が開かれています。この授業では特に、日曜市を中心とした生活を営む人々のライフストーリーを聞き取り、生活誌を作成しました。その過程では人の話を聞くこと、自分のことを伝えること、本当はとても当たり前のはずのことを改めて考え直しながら、「生活」について考え直し、学び直すことになりました。高知県で出会った人のことをもっと知るために、そこで教えてもらったことをより上手く、まだ日曜市のことを知らない人に伝えるために、白先生の力を借りながら取り組んでいます。実はこの授業の後、現在(2024年度)もまだ高知県を訪れながら、生活誌の取り組みを続けており、新しくこの授業を履修する学生の手伝いをしつつ、自分自身も新たに高知の人々へのインタビューを重ねています。
駒場にある東アジア藝文書院書院の101号館を訪れるたびに、ここではいつでも新しいことを学び始めていいのだという気持ちにさせられます。学び始め続けることのできる空間で、胸の高鳴りの中で、本を開き、言葉を交わすことができるようです。孟子の次の週にはベンヤミン、その次はミシェル・トゥルニエと軽やかに境界を越えつつ、EAAの先生方と、同じ学生と過ごすことのできる歓びもまた、大事に掴んでおきたいと思います。 -
小井沼 孔心さん
僕がEAAに参加したきっかけは進路に関する悩みから派生したものでした。大学では理工学系の学部に所属しているのですが、進学振り分けの際に文系後期教養とも迷い、最後には工学部を選びました。しかし、今はEAAに参加することができて学びたかった2つのことを同時に学ぶことができて非常に充実していると感じています。EAAでは要求単位の座学の他に様々な講演を聞く機会や、フィールドトリップに参加する機会などが多くあります。それらの内容も非常に広範で、広い領域に触れることができるのが特徴です。同じ東大EAAユースとの交流や北京大学側の学生との交流を通じて、様々な体験や世界に触れることができ、非常に意義があると感じました。去年の北京大学Summer Instituteではレオ・ストラウスの「ニヒリズム」やフーリエの「熱情」、「親密」、「協調」に関する概念について学習し、それについてのプレゼンテーションを行いました。英語を用いそれらの学習をすることは僕にとって大きな挑戦でしたが、普段することの少ない議論型の学習を通して多くのことを体得したと感じました。また現在2024年2月から北京大学の元培学院で交換留学をしているのですが、今学期は心理学や数学思想やアジア地域研究などの授業を履修し、幅広い学問に触れることができています。折角中国にいるのだからと中国語で授業を行う授業のみ履修しているのですが、最初は全く意味不明だったものが、回数をこなしたり、グループ別の発表であったりを通して段々と自らの脳内に落とし込めてきたという感覚は非常に大きな達成感を自分自身に与えています。元培学院の良いところはやはり自由さであると考えています。自らの興味に合わせて履修計画を組め、元培学院独自のゼミのようなカリキュラムも非常に様々な種類があり、僕の一番のお気に入りポイントです。僕はこの元培学院独自の課程で粤語の授業を履修しました。少人数で講師との距離も近く、最後は歌を歌ったりして非常に楽しい授業でした。また今回の留学の最大の注目点はやはり共同生活の環境といえるでしょう。通常留学生は留学生用の中関新園という個室付きの寮に住みますが、僕たちは現地の元培学院の学部生と4人一部屋の共同生活をします。僕にとっては共同生活自体が初めてで、最初は不安でしたが生活リズムの見直しや、協調性、自律性を学ぶことにつながったのみならず、多くの現地学生ととても近い距離で接することができたので非常に有意義であったと感じています。
最後になりますが、EAAは哲学や思想にとどまらずとも、様々な経験や学びを得られる場所であると感じています。副専攻的に学んでみたい人、様々な世界や人に触れてみたい人、自ら積極的に色んな場所に赴く意志が強い人にはとてもおすすめのプログラムです。今までよりも多くの人が本プログラムに興味を持ってくれればよいなと感じます。 -
小松 咲輝さん
東アジア藝文書院は、自分にとって、学びを通じて人と繋がれる場所です。
書院という空間では、バックグラウンド、所属、母語、ひとりひとり全く異なる背景をもつ個人が、思いがけず遭遇し合います。教養を接点に繋がる、知のコミュニティーのように感じます。
各種のイベントや授業で登壇される先生方や、学問の世界を泳ぐ修士・博士のTAさん、文理幅広い専攻から集まる刺激的で頼もしいユース生。優秀な卒業生たちも、それぞれの新天地で活躍していますし、交換派遣やSummer Institute を通じて出会う北京大学の学生も、優秀で素晴らしい学生ばかりです。
EAAでは、このように多様性に満ちた空間の中で、日本語・英語・中国語を公用語として学びを消化することができます。
ある先生は、この授業の主な使用言語は英語だが、この教室には英語がわかる学生も、中国語がわかる学生も日本語がわかる学生もいる。“EAA-glish”で自由に議論しようとおっしゃいました。またある先生は、その言語ができてるかは気にする必要がない、自分を表現せよとおっしゃいました。
EAAの活動の最中には、聡明な皆さんに惚れ惚れするとともに、自身の力不足を痛感してしまう場面も少なくはありません。そんな中でも自分の思考と、他者との言葉の交換を楽しめる場所です。 -
谷 栞里さん
EAAの最大の強みは、常に挑戦的な環境に身を置くことができる点です。EAAには必修の英語科目「東アジア教養学理論・演習」をはじめ、日中英3ヶ国語を使う様々な活動があります。難易度が高く感じることもありますが、ともすれば圧力がない代わりに成長も少ない快適な環境に浸りがちな大学生活の中では、常に自分を刺激し成長させてくれる貴重な場でした。私は文科一類に入学してから大学2年夏の進学選択まで資格試験の勉強ばかりしており、EAAに参加してから哲学や文学、歴史の問いにほぼ初めて触れました。難しい問いである上に専門知識もなかったのですが、今までの勉強と違って自分で自由に思考できる、そして自由な考えを受け入れてもらえたとき、大学に入学してから初めて自分の頭で学んでいる感覚になったことを覚えています。
またEAAには学部や専門を超えた人々が集まっており、多様な考えや経験を共有することができます。学部の授業や活動では、比較的均質な人の中で学び交流するために、自分の考えが周りに合わせて固定化され「べき論」のようなものに陥ってしまうこともあるのではないでしょうか。EAAはそのように凝り固まった頭を解きほぐしてくれる絶好の機会を与えてくれます。
現在私はEAAの派遣留学生として北京大学で学んでいます。EAAの留学は一般の交換留学とは異なり現地の学生と同じ寮に住み、共同生活を営むことができます。この共同生活を通じて、中国についての知識理解だけではなく感覚的理解も深まったように感じます。EAAでは多くの方に支えられ糧となる経験を得ることができました。ここでの学びを大学院やこれからの生活にも繋げていきたいです。