第五期生
  • 若林 学

    東アジア藝文書院(EAA)は、教室を飛び出し様々な場所で自由に学ぶ機会を提供してくれる稀有な学びの場であり、私はこの点をかなり気に入っています。「東アジア藝文書院」という名前は一見伝統的で、重苦しくすら感じるかもしれませんが、実際は自由さと実践性に満ち溢れており、きっとその自由度と実践性の高さこそがEAAの目指す「新たな教養」の本質に深く関わる部分であると感じています。一方向的な座学だけでは得られない学びがそこにはあるのです。
    そうした学びの例として私が挙げたいのは、必修授業である東アジア教養学演習、不定期開催のフィールドトリップ、北京大学元培学院への交換留学、の3つです。
    まず、東アジア教養学演習について、学生による日英中三言語を用いたディスカッションもその特徴ではありますが、現地学習の機会が多いことも特筆すべき点です。先の夏学期では旧豊多摩刑務所跡地の抱える問題を実際に現地訪問し調べたり、東京トイレプロジェクトについて理解を深めるために実際に公衆トイレを巡ったりしました。他にも阿古先生の自宅を訪れたり、摺り足を実践してみたりと色々なことをしました。実地学習に行くことが当日になってアナウンスされ少々困惑することもありますが、この教室の枠組みを超えた柔軟な学びの場はそれ以上に魅力的です。
    第二に、EAAでは不定期でフィールドトリップが開催され、私は昨年6月に日本の近代化をテーマとしたフィールドトリップで富岡製糸場と渡良瀬遊水地を訪れました。富岡製糸場や渡良瀬遊水地は、知識として日本の近代化においてどのような位置付けがなされる場所か知っていることはあっても、実際に訪れる機会は少ないかと思います。私も実際に訪れたことは無く、また、日本の近代化の光と闇については十分に理解しているので訪れたところでそこまで感じることもないだろうという驕りさえありました。しかし、旧谷中村合同慰霊碑などを実際に訪れてみると、風化し忘れ去られていく悲劇の重々しさに様々なことを考えさせられ、非常に良い学びになったのです。私にとって「百聞は一見に如かず」を痛切に感じた良い体験でした。
    最後に、EAAでは希望すれば北京大学元培学院に1学期単位で最大1年間留学することができます。北京大学への交換留学プログラムは本学のUSTEPを含めて多々ありますが、北京大の中でも特に優秀な学生の集まる元培学院への留学が可能なのは日本ではEAAだけです。留学中は元培学院の学生と4人部屋の寮に住むことになります。私も先学期に元培学院へ留学しましたが、やはり、共に住んでみる、というのは異文化を理解する上で最も実践的で効率的な方法であると感じています。北京大学では黒板のみを用い授業をする講義も多く、現在日本で主流となっているパワーポイントを使った授業方法について考えされられるきっかけとなりました。
    以上のように、自由度と実践性の高さこそがEAAの特徴です。EAAの参加を検討している方にとっては、日英中3言語を用いることのハードルの高さが最大のネックになるかと思いますが、気負う必要はありませんし、本質は言語の習熟度ではありません。母語でしか表現できない複雑な内容をある学生が日本語で語り、それを別の学生が英語や中国語に同時通訳する、というようなことはEAAではままあります。言語をハードルと捉えず、まずはEAAを覗いてみることを強くお勧めします。