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2024.04.09

悦びの記#24(2024年4月9日)

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今年は顕著な暖冬傾向が続き、ソメイヨシノの開花は昨年と同じように早いのかと思っていましたが、3月下旬以降の長雨で寒い日が連続したせいか、結局、329日と30日におこなわれたバーグルエン中国センター主催の「共生」会議のときにはキャンパスの桜花もまばらで、せっかく海外からいらしてくださった参加者の皆さんに東京らしい春を楽しんでいただくには至りませんでした。

しかし、むしろそれでよかったのです。「共生」会議は、「共生」なる概念をもう一度地球的課題に応えるための思想へと練り上げていこうとする新たな運動の始まりを告げる集会でしたので、まだ花を咲かせるには早すぎますし、ましてや共生の理想においてひらくべき花々としてきっと桜は似つかわしくありません。それは、とりわけ日本の文化のなかでは桜が、会議の中でも再三指摘があった「共生」の負の側面を象徴するものでもあるからです。桜を愛でる感性と陥穽を問うことは新たな「共生」を考える場合に不可欠であるにちがいありません。

この会議については、多くの方々と多くのことを語りあったので実はまだわたしのなかでも整理がついていません。もうしばらくその混沌を楽しんでおきたいので、今はこれ以上触れないことにします。

さて、わたしたちのキャンパスはその後新しい学期に入り、若々しい新入生たちを迎えて賑わっています。そんな中で、東アジア藝文書院にも客人がひっきりなしに訪れてくれています。

327日にはもはや恒例となった四日市高校の生徒さんの訪問がありました。その日の午後には中国現代文学の宋声泉さん(中国人民大学)と馬勤勤さん(中国社会科学院)ご夫妻がお子さんを連れてオフィスを訪ねてくれました。4月に入って、4日には東京カレッジの招聘がかなって駒場で授業をご担当いただく酒井直樹さん(コーネル大学)に初めて日本でお目にかかることができました。6日には広州にある中山大学から謝湜副学長ひきいる人文高等研究院の皆さんと交流する機会がありました。お引き合わせくださった川島真さんにこの場で感謝いたします。また、8日には北京大学燕京学堂の副院長Brent Haasさんが訪れ、両大学の英語プログラムに関して意見を交換しました。

東アジア藝文書院は、世界の研究者たちを結ぶネットワークのハブとして、多くの人々が集まり散じる場所でありたいと念願しています。このネットワークのもとに咲く花は時期も形も色も香りもすべて異なるものであるにちがいありません。それがconvivial flourishingのあるべき姿というものです。

 

 

石井剛(EAA院長/総合文化研究科)