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2023.08.21

悦びの記#15(2023年8月20日)

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   東アジア藝文書院は「書院」という名の通り、学問を通じたよりよき人の成長を促す場です。そこでは、言語と国境の壁を軽々と越えながらさまざまな考えの人々が集まっては散じていくことが繰り返されます。「場」とはそういう意味では地理的にどこか明確な空間のことを示すだけではなく、世界に広がる不定型なネットワークのことを意味しています。駒場と本郷にある東アジア藝文書院の固定した場は、そうしたネットワークの一つの結節点であり、世界に広がる他のさまざまな結節点と関係を持ちながら、人々の往き来を促しています。たいへんおもしろいのは、このネットワークが研究のみならず産業社会にもつながっていることです。これがわたしたちの強みになっています。

 こうした中でも、わたしたちが最も期待を寄せるのは、何と言っても未来の世界を担う学生さんたちがこのネットワークに入ってくることです。北京大学との交流から始まった東アジア藝文書院は、教育プログラムを最初から持つことによって、大学における国際研究と社会連携を人の成長へと直に結びつけることができています。大学が社会と共に次世代の人々を育てる場を提供することが、わたしたちが世に示そうとする新しい学問のモデルであり、先日の「根源的な中立性」はそこで行われる学問のありようを名指そうとしたものです。

 すでにわたしたちのプログラム「東アジア教養学」からは修了生が3年連続で生まれており、少しずつ同窓会組織も活動を始めています。省庁に進んだ人もいれば、海外に留学する人や、フランス料理の修業へと進む人もいて、数は少ないながら多彩なメンバーがそろっているのは、彼らが今後長い将来に向かって育っていくのに大きな助けになるのではないかと期待しています。

 また、このプログラムに対する期待が高まっているのもしばしば実感します。去る724日には、清華大学で働く友人の倉重拓さんが、研修旅行の引率ということで学生さんを引き連れて駒場を訪問してくれました。TLPの学生さんがお相手を務めてくれたのは心強い限りでした。わたしたちは北京大学とのジョイント・プログラムですが、こうして関心を持ってくれる大学が、少しずつ広がってきているのはうれしいことです。

    なお、東アジア教養学プログラムはTLPの学部後期課程における発展版(後期TLP)でもあります。また、なぜ大学院にプログラムを展開しないのかという質問を受けることも多くなってきました。東アジアに対する関心が世界的に高まっている中で、英語と中国語、日本語による高度な教育が日本の東京で展開されているということには特殊な意味があるということなのだと思います。これを続けていくことはもちろん容易なことではありません。しかし、この試みに大きな意義があることはまちがいないだろうという実感が、訪れる若い方々の話を聞くたびに強まるばかりです。

 今日はこの後夕方に、初めての同窓会が開かれることになっています。さて、どんな話を聞くことができるでしょうか。

 サムネイルは蓼科の森です。酷暑が続きますので一服の清涼剤になればと。

石井剛(EAA院長/総合文化研究科)