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2021.01.10

【活動報告】UTokyo-PKU Joint Course 第13回講義 2020年1月8日

2021年18日、第13回「UTokyo-PKU Joint Course」が開講された。講師は経営学を専門とする清水剛氏(総合文化研究科教授)であった。

前回の前島氏と同様、清水氏は、第二次大戦以前、日本は様々な感染症に見舞われていたことに触れ、それが医療技術の革新等により改善されてきたと述べた。例えば結核は、BCGやストレプトマイシンにより1950年代に一気に改善され、平均寿命も伸びたという。その後、新型コロナウィルスの流行に至るまで、人々は感染症をあまり気にせずに暮らしてきた。

コロナウィルスは、命、健康、金銭を失うリスクとなり、結果として将来の予測可能性が低下する。そうした中で、雇用者や消費者はどのような行動を取るか、取るべきかが論じられた。

昨年4月頃、労働者の多くが在宅勤務となったが、政府からの雇用調整助成金もあり、正規労働者の雇用は守られた反面、非正規労働者の多くが失業したといわれる。

清水氏は、第二次大戦以前の繊維産業について触れ、当時、労働者の健康に配慮せずかれらを使い潰す経営から、労働者へのケアをする方向への移行があったと指摘した。例として、鐘淵紡績と武藤山治(18671934)、倉敷紡績と大原孫三郎(18801943)が挙げられた。例えば、寄宿舎の改良や、教育プログラムの導入が行われた。産業の総合的な状況、工場法の制定についても話が及んだ。

ディスカッションでは、コロナ禍で、企業は十分手厚い労働者ケアを行っているか、手厚い保護をすべきか、その必要はないか、企業はなにをするべきだと思うか、ということについて、正規労働者、非正規労働者に分けて、課題が設定された。そこで石井剛氏(EAA副院長)から、正規労働者、非正規労働者という分け方は、海外からの学生には分かりにくいのではと指摘があり、正規労働者には保険は年金といった社会保障があるなど、清水氏が補足をした。企業ではなく、政府が支援をなすべきではとの意見に対して、ある程度は企業から出すべきと清水氏は自説を述べた。

その後、消費者の行動に話は移り、将来予測が困難になる中で、消費を控えるあるいは拡大する行動について論じられた。いずれの場合でも、詐欺を防ぐことが重要とされた。詐欺を防ぐ「技術」としてデパートの正札、現金、陳列販売や、雑誌による通信販売、生協が紹介された。さらにインターネットを介した詐欺をどう防ぐかに話は及んだ。消費者による評価システムというのがインターネット上では盛んだが、機能するかが問題とされた。いずれにせよ、評判とネットワークの構築とが詐欺を防ぐために有効であろうとされた。

最終回でもあり、最後に石井氏から挨拶があった。東大と北京大とが、このようにオンラインでつながるということの重要さが強調された。併せて氏は、そのつながりを今後も大事にしてほしいとの思いを述べ、講義全体を締めくくった。

 

報告者:高原智史(EAAリサーチ・アシスタント)