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2025.04.11

文運日新 11:離任にあたって——張政婷さん

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今から一年半前の秋、私は博士課程に在籍しながらEAAの一員となりました。それからの日々はあっという間で、気づけばこの刺激的な環境を離れる時が訪れていました。短い在任期間ではありましたが、EAAで過ごした時間は濃密で充実しており、毎日が新鮮な発見の連続でした。

初めの半年間は学術専門職員としてEAAの業務に携わり、組織を支える多様な仕事を経験させていただきました。それまで学生側や参加者側の視点しか持っていなかった私にとって、運営する側として学術イベントに関われたことは非常に貴重な経験であったと感じます。「共生」国際学術シンポジウムをはじめ、微力ながら研究・教育に関するさまざまなイベントの運営や事務を担当する中で、シンポジウムや講演会、授業といった学術活動は綿密な準備と多数の人々の努力によって成り立っていることを実感し、学術の現場がどのように企画・運営されているのかを実践的に学ぶことができました。

その後の約一年間は、特任研究員として過ごしました。ここでもさまざまなイベントのサポート業務を通じて、多角的な視点から深い議論が交わされる場に立ち会えたことは、非常に刺激的な体験でした。イベントの企画・運営の実際を知るだけでなく、学問における問いの立て方や人との関わり方についても、多くの学びを得ることができたと感じます。研究者の方々や先生方との交流を通じて、自身がめざす研究者像を見つめ直し、学際的な視点の重要性を再認識できました。また専門の枠を超えて新たな可能性を模索する姿勢の大切さも、EAAでの経験を通じて深く心に刻みました。

任期終了にあたり、「Across Cultures and Pages: The Landscape of Children’s Literature in East Asia Online Symposium」を企画しました。このシンポジウムでは、東アジアの児童文学と子ども観の多様性を探究し、「中国の童話の変遷とその社会的意義」「台湾の絵本の国際的流通」「韓国の絵本における現代的な子ども観」「日本と英語圏の児童文学の伝統の違い」など、さまざまなテーマについて掘り下げました。これによって、東アジアの児童文学が歴史の中でどのように形成されたのか、また、伝統や語りの変化、文化的特性がどのように発展してきたのかについて考察を深めることができました。そして、上記の各国の児童文学がどのように変化し、今後どのような方向へ向かうのかについて、これまでにない見方を提供する貴重な機会となったとも考えます。このイベントを実現できたことは、EAAでの経験がもたらした成果の一つといえるでしょう。

私にとって、EAAで過ごした時間は単なる仕事や研究の枠にとどまらず、学問はいかにあるべきかという根源的な問いや、研究者としての生き方そのものについて深く考えさせられる契機となりました。EAAのメンバー、そしてイベントに招かれた世界中の研究者との交流を通じて、その姿勢や考え方から多くのものを受け取ることができたと感じます。それと同時に、常に自分の未熟さを痛感しつつも「これからどのような研究者をめざすのか」、さらには「一人の人間として、研究を通じて何を成し遂げたいか」と自問し続ける日々でもありました。

末筆ながら、先生方をはじめ事務の方々、助教や研究員の皆様、そしてRAの皆様など、お世話になったすべての方々に心より感謝申し上げます。私事により早めにお休みを頂戴することとなり恐縮ですが、新しい家族を迎えることによって生活が変化しても、EAAで得たものを糧に自身の研究と生き方をより広い視野で捉え、今後も新たな可能性を模索しつつ精進してまいります。