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2025.02.17

文運日新 10:離任にあたって——伊丹さん

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博士号を取得した後、私は東洋文化研究所東アジア藝文書院で特任研究員として九ヶ月を過ごしました。本来は一年の予定でしたが、次の職務の都合により、九ヶ月での退任となりました。この約一年は、私にとって学生から社会人へと移行する大切な期間でした。最初の数ヶ月は、新しい環境に慣れることで精一杯でしたが、先輩方や同僚の皆さんの助けを得て、少しずつ仕事のリズムをつかむことができました。

特に印象に残っているのは、四国での出張です。先生方とともに徳島県を訪れ、千年楠のそばで「おおくすセミナー・藝文学研究会」を開催しました。その際、地元の方々や関西の先生方のご協力をいただき、ご当地の貴重な民俗文化について解説していただきました。思いがけない質問が地元の方々から飛び出す場面もありましたが、他分野の先生方のコメントとあわせて、普段は文学研究をメインとする私たちにとって、非常に刺激的で有益な経験となりました。この出張は、私の研究にとって大きな財産となったと感じています。

東アジア藝文書院では、毎週さまざまな学術イベントが開催されています。シンポジウムや講演だけでなく、研究セミナーや共同研究会、さらには古典本曲の演奏会まで催されており、分野を超えた研究者が集い、自由に意見を交わす場となっています。他分野の研究発表やコメントを聞く中で、異なる視点から物事を見ることの大切さを学びました。時には、思いがけない研究アイデアがふと浮かぶこともあり、このような環境はまさに「研究の聖地」と呼ぶにふさわしいと感じました。ここでの学術イベントでは、日本語だけでなく、中国語や英語など、さまざまな言語が飛び交っています。海外の研究者が滞在しているほか、国外からシンポジウムに参加する先生方も多く、日本にいながらにして、まるで国際学会に参加しているかのような感覚を味わうことができました。言語面だけでなく、研究の視点やアプローチについても多くを学ぶ貴重な機会となりました。また、懇親会にはOBの方々や訪問研究員も多く参加し、お茶を片手に研究談義に花を咲かせる中で、新たなアイデアが生まれることも少なくありませんでした。

また、学術専門職員の伊野さん、特任助教の崎濱さん、同じ特任研究員の黄さんには、研究面だけでなく、日々の業務面でも多くのサポートをいただきました。コピー機の使い方や会議の準備など、基本的なことから丁寧に指導してくださったおかげで、スムーズに仕事を進めることができました。

この九ヶ月で、私は本当に多くのことを学びました。博士課程では自分の研究に没頭していましたが、東アジア藝文書院では異なる分野の研究者と交流する機会が多く、視野を広げることができました。また、研究以外の業務を通じて、社会人としての責任感やチームワークの大切さも実感しました。

この春からは、新しい職場で独立して研究を進めていきます。まだまだ未熟ではありますが、ここで学んだことを活かし、今後も精進していきたいと思います。最後に、この九ヶ月間支えてくださったすべての方々に、心から感謝申し上げます。