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2023.11.02

【報告】第5回EAA研究会「東アジアと仏教」
シンポジウム「日本における宋代禅の受容と展開」

2023年10月27日(金)15時より、第5回EAA研究会「東アジアと仏教」を開催した。今回は柳幹康氏(東京大学東洋文化研究所)、張超氏(PSL研究大学フランス高等研究実習院専任副研究員)、ディディエ・ダヴァン氏(国文学研究資料館)が報告者となり、「日本における宋代禅の受容と展開」と題するシンポジウムが挙行された。通訳は小川隆氏(駒澤大学)、司会は柳氏がつとめた。対面では23名、さらに60名以上のオンライン参加者を含め、計80名以上が会する盛況ぶりであった。

 

 

柳は「中国大慧宗杲による看話禅の成立と日本白隠慧鶴によるその再編」と題する発表を行ない、看話禅を大成した大慧とそれを受容した白隠の思想体系やその背景を比較分析した。続いて張氏は「唐国亦有五山十刹否?――義堂周信日記所見中国禅」(「唐国にも五山十刹はあったのか?――義堂周信の日記に見える中国禅」)と題し、日本中世禅僧の日記『智覚普明国師語録』や『空華日用工夫略集』、『空華日用工夫集別抄』を用いて、日本の禅僧による中国の五山制をめぐる認識について分析を加えた。最後にダヴァン氏は、「日本的看話禅の起源――転換点としての大燈」と題する発表において、宋代禅の日本における独自の展開について、「看話禅」を軸に検討した。質疑応答では、中国の五山制度と呉越仏教や入宋僧の権限との関係、公案と悟りとの関係についての質問があった。

 

 

本シンポジウムは、今年のEAJS大会(European Association for Japanese Studies=ヨーロッパ日本研究協会)でのパネル “New outlooks on Japanese Rinzai Zen”をもととするものであった。日本とフランスそれぞれを拠点とする禅学研究者が教学と歴史学両方の視点から、臨済禅研究の最新成果を披露した興味深い内容であった。また、今回日本を訪問した張氏のご発表は、異文化理解というアプローチから中国宗教を検討するとされているが、近年、中国語圏の学界は「域外漢学」という分野が盛んであり、王振忠『従黄山白岳到東亜海域:明清江南文化与域外世界(黄山から東アジア海域へ:明清の江南文化と域外世界)』(2021年)、朱莉麗『行観中国 : 日本使節眼中的明代社会(行観中国:日本使節からみた明代の社会)』(2013年)などの書籍も出版されている。更なる対話と交流が楽しみである。

 

報告者:黄霄龍(EAA特任研究員)