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2021.09.29

【報告】第26回石牟礼道子を読む会

 2021年9月28日 (火) 午後、第26回 石牟礼道子を読む会 山田徹監督ドキュメンタリー作品上映会が101号館にて開催された。参加者は山田監督のほかに、鈴木将久氏(人文社会系研究科)、宇野瑞木氏(EAA特任助教)、髙山花子氏(EAA特任助教)、宮田晃碩氏(EAAリサーチ・アシスタント)、日隈脩一郎氏(EAAリサーチ・アシスタント)、建部良平氏(東京大学大学院博士課程)と報告者の張政遠(総合文化研究科)の8名であった。

 まず、『新地町の漁師たち』(2016年完全版)が上映会された。このドキュメンタリー映画は、福島県浜通りの北部にある新地町に住んでいる漁師たちの震災後の姿を記録したものである。漁師たちがいつかまた漁に出る日を待ちながらも、汚染水の海洋放出により翻弄されるシーンが非常に印象深かった。

 

『新地町の漁師たち』(2016年/完全版)

 

 次に、 『あいまいな喪失』(2019年短編版)が上映された。このドキュメンタリー映画は、『テツさん、浪江町へ』2018年)(https://youtu.be/TpSvmox6PEQ)の続編として展開したものである。『テツさん、浪江町へ』では、震災後、浪江町からいわきへ避難したテツさん一家は、解体直前の浪江町の家に帰ったことが記録されたが、『あいまいな喪失』では、老老介護問題やテツさんの故郷である大熊町の現状などが物語られた。

 

『あいまいな喪失』(2019年/短編版)

 

 二つの作品を観たあと、山田徹監督による作品解説と質疑応答が行われた。今までの石牟礼道子を読む会は、主に石牟礼の作品の解読と古典芸能の鑑賞という形をとってきたが、今回は漁師の生業と価値観海洋汚染問題前近代の祭り花の道人間らしさ女性と子どもの声死者の声などについて、現代問題としての福島第一原子力発電所事故から水俣病を再考するきっかけを提供した。また、東アジア藝文書院では、「101号館」の歴史を描く映像制作プロジェクトを立ち上げているが、山田監督から記録物語知ることの大事さ写真の役割などについて貴重なアドバイスをいただいた。

 なお、今回は上映会ということで、オンラインではなく対面での開催となったが、参加者一同、対面によるコミュニケーションのよさを実感できた場ともなった。

 

山田徹監督(左)と司会を務めた筆者(右)

 

報告:張政遠(東京大学総合文化研究科)