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2024.05.13

【報告】第29回東アジア仏典講読会

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2023年12月16日(土)14時より、第29回東アジア仏典講読会をハイブリッド形式にて開催した。今回は柳幹康(東京大学東洋文化研究所准教授)と小川隆氏(駒沢大学教授)により、それぞれ大慧の所説ならびに『宗門武庫』の講読がなされた。

 

 

柳は大慧の「大自在」(偉大な自由)を理解するための材料として、以下三種の普説を取り上げ講読した。すなわち⑴「程総幹請普説」、⑵「孟宗丞請普説」、「超明海三大師請普説」、⑷書簡「答富枢密」である。そこからは以下のような理解が読み取れる。⑴迷いの根源たる阿頼耶識を一刀両断することで「大自在」が得られる。⑵それは日常生活で発揮されるもので、経典にあるように慈悲を巡らせ衆生を救済する。⑶それは経典に説かれたものであると同時に、祖師が悟ったものである。つまり大慧は禅僧の視点から『華厳経』に説かれる「大自在」を理解し、禅宗祖師も仏と同じ悟りを得て自由自在に衆生を救済すると述べたのである。

 

 

小川氏は前回講読した『宗門武庫』第16段に対する補足資料として、同書第86段、および「代付」に関する資料を講読してくださった。『宗門武庫』第86段には語録や灯史に記されないような当時の肉身不壊に関する逸話が残されている。曹洞宗の大陽警玄(943-1027)には平侍者という法嗣がいたが、その心根は良くなかった。大陽警玄が示寂し土葬された後、住持となった平侍者はその墓を暴き、生前の姿のままであった大陽警玄の亡骸を火葬しようとした。薪で焼いても燃えなかったが、平侍者がクワでその頭を叩き割って薪と油を加えると、にわかに灰燼に帰してしまった。平侍者はその悪行が露見して還俗させられ、後に虎に食い殺されたという。一方「代付」は法を預かり代わりに付授するの意であり、曹洞宗の大陽警玄の法を臨済宗の葉県帰省が預かり投子義青(1032-1083)に授けたことで、曹洞宗の系譜が繋がったとされる。

6月に開催した第24回以降、柳が準備した大慧の悟りに関する資料の講読を続け、今回その全てを読み切ることができた。各分野の専門家から様々なご意見をいただき、『殃崛摩羅経』との関わりなど当初分からなかった内容を理解することができた。この場をかりて皆さまのご教示に改めて感謝を申し上げたい。

 

報告者:柳幹康(東洋文化研究所)