東アジア藝文書院(EAA)の設立(2019年)から4年、またユースプログラムの設立から3年にあたり、今年、EAAユースプログラムのアラムナイ生組織「藝文会」を立ち上げた。EAAコミュニティをさらに広げ、活性化させるためにも、「藝文会」の活動を今後少しずつ充実させていきたい所存である。
さて、2023年8月20日に「藝文会」第一回の同窓会を開く運びとなった。開催前に、院長の石井剛先生と同窓会に参加するアラムナイ生4名で駒場キャンパス101号館にて座談会を開くこととなった(石井先生は残念ながら同窓会を欠席)。久々の再会に際し、石井先生よりまずはEAAの近年の活動についてアラムナイ生にご報告いただいた。学術フロンティア講義「30年後の世界へ—空気はいかに価値化されるべきか」やボン大学との連携など、興味深いプロジェクトの数々にアラムナイ生は胸を躍らせた。その後、アラムナイ生一人一人から近況の報告があり、社会人一年目で仕事にまだ慣れないなか奮闘する方や、資格試験を終えたばかりの方、さらには海外への留学を決断した者もおり、三者三様でありながらそれぞれの道で奮闘していることを確認し合えた。その後、話題は多様なものに及んだが、中でも石井先生が語った藝文会が「多くの方が所属し、自由に様々な参画の仕方を許すようなコミュニティであってほしい」という言葉には多くの方が首肯した。
座談会が終了した後、アラムナイ生たちは同窓会の会場である台湾料理屋に赴いた。同窓会では他愛もない話で花を咲かすことができた。仕事での話やプライベートの話、さらには時事問題にも話が及んだ。また、今後の藝文会の活動に関してもいくつかアイディアが上がり、今後の活動の展開への期待が高まるような時間を過ごせた。この会であげられたアイディアが実現されることが楽しみでならない。
今回のアラムナイ組織「藝文会」の立ち上げに当たり、私は思わずハンナ・アレントの『人間の条件』に登場したこの言葉を想起した。
「人間である以上止めることができないのが、この創始(イニシアティヴ)であり、人間を人間たらしめるのもこの創始である。(p.287)」
本書においてアレントは人間の営み(厳密にいえば思考といった「観照的生活」に対置される「活動的生活」)を、生命維持に関わる「労働」、(人間が暮らす)世界の創造に関わる「仕事」、人と人の間で行われる「活動」に分けたが、アレントはまさに「活動」、そして活動によって示される「創設」に重要な価値を見出しているのだ。
「人間が活動する能力をもつという事実は、本来は予想できないことも、人間には期待できるということ、つまり、人間は、ほとんど不可能な事柄をなしうるということを意味する。(p.289)」
アレントの言葉を引用して、「藝文会」の創設をこのように言及するのは大仰なことではあるかもしれないが、ここで行われる「活動」から予想もつかなかったようなダイナミズムが生まれることを心より期待したいし、そのために私も尽力していく所存である。それがEAAの理念でもある「30年後の世界へ」にも貢献することを願いたい。
報告者:孔徳湧(EAAユース第1期生)