昨年2022年11月に行われた第2回「書院を考える」研究会では、石井剛副院長が東アジア藝文書院(EAA)の三大ミッション、すなわち研究・教育・社会連携について報告した。EAAは研究センターであると同時に、教育と社会連携にも積極的に取り組んでいる書院である。2023年1月17(火)には、今後の課題とされた「ナレッジトランスファー」と「リカレント教育」について張が意見を述べた。
「ナレッジトランスファー(Knowledge Transfer)」とは日本語では「知識移転」と訳されることが多いが、アメリカでは「技術移転」、つまり大学がもっている技術を産業界へ移転するものとして注目されている。一方、イギリスでは「ナレッジトランスファー」は狭い意味での産学連携ではなく、大学・企業・共同体の間でのコラボレーションを支援する幅広い活動を指している。発表者は前任校の香港中文大学で「ナレッジトランスファー」プロジェクトを立ち上げ、哲学カフェ・展示・ワークショップなどを通じて、被災地の共同体や生活環境の再生をサポートする活動をした経験を紹介した。
「リカレント教育」とは、いっぱんに日本語では循環教育または再生教育と訳されている。イギリスには、『リタと大学教授(Educating Rita)』という舞台劇(のちに映画化されている)があり、それは社会人のリタが大学で勉強する物語である。じっさい、講義主体の修士課程(Taught Master Progromme)は数多くあり、発表者は香港中文大学大学院日本研究専攻文学修士課程について紹介した。
EAAでは、今後「空気の価値化」や「哲学カフェ」などのナレッジトランスファー活動を進め、社会人プログラムや書院教育などのリカレント教育の可能性を探りたい。
報告:張政遠(総合文化研究科)