「技術」と「テクノロジー」とは同じものではないのか。近代以前の中国思想の探求は現代の技術に多様性をもたらすことができるのか。また、これは脱植民地化や近代の超克論とどう関わりうるのか。香港の哲学者ユク・ホイの著書『中国における技術への問い』(英語原著:The Question Concerning Technology in China, Urbanomic, 2016)をひとたび開いてみれば、以上のような問題が次から次へと迫ってくる。現時点ですでに5ケ国語に訳された本書だが、2022年8月にEAAリサーチ・アシスタント伊勢康平氏による日本語版もゲンロンから出版された。
これを機に、9月28日午後、EAAユースの主体的な活動の一つとして「訳者と共に読む『中国における技術への問い』読書会」の第一回が開催された。運営チームの汪牧耘氏(EAA特任研究員)、伊勢康平氏(EAAリサーチ・アシスタント)、上田有輝氏(EAAリサーチ・アシスタント)、及び執筆者のニコロヴァ・ヴィクトリヤ(EAAリサーチ・アシスタント)に加えて、学部生7人が参加した。今回は、各自の自己紹介と伊勢氏による導入の言葉を経て、「日本語版へのまえがき」に因みながら問題意識を共有しあう回となった。ほとんどの参加者にとっては初対面だったにもかかわらず、議論は予定していた2時間いっぱいまで続き、次回のさらなる議論への期待が高まった。
本読書会では、著書の内容について様々な側面から自由に討論することを目的とする。同時に、訳者の伊勢氏と意見交換をしながら、哲学書を訳すことならではの難しさや、本書の日本語訳の特徴と独自の価値など、つまり「翻訳」というプロセスを広く問うていくことにも努めたい。ところで、ホイ氏は本書を指して「今後の人生のなかで私が取り組んでゆく仕事の目次になる本」だという(p.430、「訳者あとがき」から)。参加者もこれからしばらく、それぞれの長く取り組むべき課題の「目次」に向けて一緒に模索することになるだろう。読書会がそのためのささやかな場を提供できれば幸いに思う。
報告者:ニコロヴァ・ヴィクトリヤ(EAAリサーチ・アシスタント)