2022年9月5日(月)午後、「特別企画・ウクライナの今を語る」が駒場キャンパスのEAAセミナー室で開催された。木村和穂氏(NHK)が、ウクライナ取材の見聞を報告した。空路と陸路で50時間以上かけてキーウ・チェルニーヒウなどの現地入りを果たした木村氏によると、つぎの状況であるという。空襲警報・検問・夜間移動制限があるなか、普段通りの生活が戻りつつある。東部ではまだ激しい戦闘が続いているが、それと同時並行で、ロシア軍による戦争犯罪をウクライナの国内法に則って裁く裁判が行われている。法廷内で取材・撮影もできるこれらの裁判は、非常時にもかかわらず独立した司法制度が機能していること、そして報復的な裁判が行われていないことをアピールする狙いがある。しかし、戦時中の捜査や検挙などは決して容易ではない。じっさい、検事は戦争犯罪にかんする経験がなく、ロシア軍の容疑者を弁護する弁護士は嫌がらせを受け、捕虜交換で容疑者をロシアに帰した場合もある。一般人にかんしては、貧困や家庭内暴力などの問題に直面しているだけでなく、PTSD・アルコール依存症を罹患した人が少なくない。しかし、ほとんどのウクライナ人は厭戦気分ではなく、むしろ士気が高い。戦争の終わらせ方については、2月24日の侵攻開始時点の境界線に戻すという見方があったが、2014年のクリミア併合で失われた地域を回復するまで徹底抗戦する可能性が高い。――以上の報告を聞き、いつ終戦になるかわからないが、ウクライナの現実を知る重要性をわたしは改めて痛感した。
報告者:張政遠(総合文化研究科)
撮影:髙山花子(EAA特任助教)
【報告】第2回・第3回「開発と文学」研究会
映画『籠城』をめぐって(3)於 山形大学