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2022.06.24

【報告】第8回EAA「民俗学×哲学」研究会

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2022年6月18日、8 EAA「民俗学×哲学」研究会=「書院とまちづくり」が、徳島県三好郡東みよし町のおおくすハウスにて開催された。四国には、「金刀比羅宮表書院」(琴平町)、「旧立川番所書院」(大豊町)、「止善書院明倫堂跡」(大洲市)、「書院橋」(三好市)といった書院のゆかりの地が点在している。そもそも書院とは私塾の一類型であり、科挙制度に深く関係している。本講演では、1. 覲廷書室(香港の伝統的な書院)、2. 新亞書院(香港の近代的な書院)、そして3. 東アジア藝文書院(日本の現代的な書院)について紹介した。かりにも東みよし町に現代的な書院が造られる事になるならば、その規模・立地・組織については議論しなければならないが、より重要なのは書院の理念であろう。私見では、新しい書院は1、2、3あるいはそれ以外の書院の真似をする必要はなく、それよりむしろ「まちづくり」という理念をもって展開すべきだと思う。具体的にいえば、書院は大学のような研究・教育の場所よりも、みんなのための学び舎にするのがよい。哲学カフェが20回以上開催されている町において、「哲学書院」のもつポテンシャルは高いだろう。また、書院は狭い意味での学校であるばかりでなく、防災機能をもつ開かれた空間でもある。書院による関係人口の増加により、コミュニティの絆をさらに深めることが期待できよう。中国には「十年樹木百年樹人」という古い言葉があるが、東みよし町には樹齢千年以上の大楠がある。この大楠は「樹人」すなわち「人材」の育成を永らく見守るシンボル的存在であり、そのすぐそばにあるおおくすハウスはまさに「千年樹木百年樹人」という書院としてまちづくりに貢献しうる場所だと私は考えている。

 

 

報告者:張政遠(総合文化研究科)

写真撮影:島尾明良