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2022.02.21

【報告】Why do we hate each other? —Understanding hatred through historical perception gaps

東洋文化研究所(佐藤仁教授)との共催で1215日に早稲田大学からPattajit Tangsinmunkong(通称Jay)先生をお招きし、ワークショップが開催された。EAAからは佐藤麻貴(企画・司会)とMark RobertsWS企画・監修)が参加した。2021年は真珠湾攻撃(1941128日)から80周年にあたる。本ワークショップでは、日中における第二次世界大戦の映画を予め鑑賞し、そこから両国に深く根付いている歴史認識の差異について読み解き、将来のより良い国際関係を構築するためにはどうしたら良いのかを議論することを狙いとした。当日は日本、中国に限らず、様々なアジア周辺諸国の学生にも参加いただくことができ、大変濃密な議論をすることができた。下記、当日参加した学部学生諸君の感想の一部を掲載する。(文責:佐藤麻貴)

 

 

・高澤美優さんの感想     

              歴史をみる立場や重視している事象・年代が異なるので認識に齟齬が生じていることが日中歴史問題の根底にあるというJay先生のお話は新鮮で大変興味深かった。また、様々な背景を持つ参加者と本テーマについて意見を交わせたことは有意義であった。イベントの翌日には信頼している中国人の友人とさらに議論を重ねた。その中で、Jay先生もおっしゃっていたように、日中歴史問題は単なる中国にとっての外交カードだという話にとどまらないのだと強く感じた。むしろそれは、原爆を経験した戦争被害者であり、戦後から一貫して平和主義をとってきたと自負する傾向にある日本が、歴史問題から目を背けることを正当化する理論ではないか。日本では、合意やそれに基づいた支援を実行しているのになぜ歴史問題を蒸し返すのかと不満の声が多々聞かれる。しかし、中国の人々が戦時中に受けてきた暴力とその記憶や屈辱は物理的な支援だけではそう簡単に解消されないのだと思われる。         

              第二次世界大戦を国恥と捉える中国において、日本の顔である政府が大戦を想起させるような行動をとれば中国を侮辱していると思われても仕方がない。複雑な国際情勢の中で日本がどのような外交スタンスを取るべきかを簡単に言えないのは重々承知した上で、私は、日本政府は歴史問題に改めて向き合い、反省の姿勢を中国国民にわかる形で示すべきだと考える。これは、オバマ大統領が広島を訪問した時に、原爆投下の歴史は変わりないがより未来志向の日米関係が構築できるのではないかと思えたことと同じでないか。

              今後も中国の友人と生のコミュニケーションを取り続けることでまずは個人間で相互理解に努め、この問題と真摯に向き合いながら学び考え続けていきたい。

 

 

・岡飛湧芽さんの感想

              日本人と中国人の学生がこのWSに参加するのだと思っていたが、実際はそうではなく様々な国籍の生徒たちが参加していることに驚いた。このWSでは、講師の先生が学生に発言を促すので、学生たちが話してくれた隣国に対する印象や、日本に来てその印象が変化したといったような経験談を、直に聞くことができた。たとえ、留学生の知り合いがいたとしても戦争や隣国に対するイメージについて話すことは少ないため、これは貴重な経験であったと思う。

              自分は幼い頃に小学校の図書館にあった「はだしのゲン」や手塚治の戦争を題材にした漫画を読んでいたので、どうしても日本が第二次世界大戦の被害者であるというイメージが強い。もちろん、日本が加害者であるという事実も知ってはいた。だがしかし、「日本は被害者」「日本が加害者」という事実を自分はいつも日本で、日本語で、日本人から教えられた。このWSでは講師のJ先生はタイの出身であるし、参加する学生や先生の国籍も幅広く言語も英語なので、この「日本は加害者」「日本は被害者」ということが今までとは違う印象で感じられた。そして歴史・戦争・政治は不可分であり、それらに対する様々な見方のヒントを提示してくれたことは自分にとって大きな収穫になった。そういう意味でもっと日本人の学生にも聞いてほしい講義だった。またアプリを使ったリアルタイムでの授業参加システムも、質問内容が面白いのもあって楽しめた。

              短期間のうちに「戦争」に関する映画を見ることができただけでもこのWSに参加して良かったと思う。同じ「戦争」を扱っていても描き方が異なれば、そこに宿るメッセージ性はかなり変わってくることが短期間に見ることで強く印象づけられた。時間は短かったがWSの最後で、このWSのテーマに対するJ先生だけでなく他の先生方の考えや想いを聞けたのもよかった。

              この「映画を通して何らかのテーマについて考える」ことは非常に楽しい経験だった。このようなWSがまたあるのなら参加したい。また今後、「メディア」「政治」「環境」を題材にした映画も見比べてみたい。