EAAは大学院生と学部生をEAAユースとして組織して、学部向け教育プログラム「東アジア教養学」を展開しています。2020年度に発足したのですが、すでに卒業生が1名出ていることはこのブログでもかつてご報告したとおりです。
このほど、その孔德湧さんが「里帰り」してくれました。経済学部を卒業後、いまは人事コンサルティングの企業で働いているそうですが、休暇を利用して駒場に立ち寄ってくれたのでした。折しも緊急事態宣言期間が明け、本学の入構制限も緩和されたタイミングでしたので、マスクをしながら、そして湯茶の提供もないままではありましたが、直に向き合って楽しい会話を交わすことができました。
経済社会が大きな変革の時を迎えているなかで、20代には特有の迷いと悩みがつきまとうのではないかと思います。もちろんそれは、その後の人生にすべて活かされるはずなので、必要な投資であると思えれば、それもまた楽しみになるかもしれません。ただ、ひとりでそれらに向き合っているのはたいへんですし、日常の人間関係の中から時には解放される必要もあるでしょう。そういうときにこそ、読書に帰り、学問に帰り、そして大学に帰ってきてもらえればと思います。EAAのオフィスは駒場にも本郷にもありますので、いつでも皆さんがふらりと帰ってくることのできるオアシスでありたいと思います。
EAAは、研究・教育・社会連携を三位一体として「新しい学問」を生み育てることをミッションとしています。それは、特に大学の外に広がる社会全体と大学との関係をこれまでとは異なるものに変えていくことを意味しています。産学連携、リカレント教育、インターン研修など具体的なアイディアや実践例はいくつもありますが、それらによって、大学と社会がそれぞれに変化しながら、人が人として豊かになるための学問の場として大学が機能していくようになるために最も不可欠なのは、制度に回収されることのない、具体的な人と人の関係を育むことでしょう。EAAユースの皆さんには、読書と学問を通じて、生活のあらゆる場面で人に交わりながら共に育っていく姿勢を卒業後も持ち続けてもらえればと、わたしたちは望んでいます。今後、毎年のように卒業生が巣立っていけばやがて同窓会も大きくなっていくでしょう。そうなれば、「30年後の世界」は遠い夢物語ではなくなり、現実にいま歩いている道の先に確実に開けてくるにちがいありません。その時、世界は、社会は、そして学問はどうあるべきか。わたしたちはどのような未来を望むのか。EAAにおいて皆さんと共に発したこの問いは、卒業してからこそ真に試されることになります。
大学を出て人生を歩み始めた孔德湧さんの明るく楽しげな表情にはたいへん安堵しました。現役のユース生の皆さんにもどんどん続いてほしいと心から願ってやみません。
報告者:石井剛(総合文化研究科/EAA副院長)