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2021.06.04

映像制作メモランダム(4)

つくっている最中の映画について何かを書くというのはとても難しいことです。映画制作が始まる前は「共同体や排除/包摂、エリーティズムといった、いかにも鍵語めいたもの」について、まるで共同研究を進めるかのように話し合い、その過程のいくらかを報告文にして公開することができました。しかし、映画をつくることができるかもしれない、とにかく映画を撮ろうと私たちが決めてから、報告文だったものはシナリオという形に変わる必要がありました。なぜなら、一高や駒場と私たちの関係、どのように私たちが寮日誌を読んだのか、なぜ私たちは一高時代のベッドや机などを集めるのか、等々について映画は示すことになるだろうからです。どうすればいいのか明確にわかっているわけではないのですが、ともかく率直な態度でなければならないとは思います。

 5月14日、制作チームは今では閉鎖されている駒場キャンパスの地下道に入りました。入ることが禁じられている場所というのは確かに魅力的です。しかも学生たちはふだん意識せずに地下道の上を歩いているわけです。私たちは地下道を楽しみました。ハクビシンがいないか探したり壁面に下品な落書きを見つけたり、ここからこういうショットが撮れるだろうかと話したり、そうして現在の地下道の様子をあらかた把握しました。改めてはっきりと見てとったのは、地下道の状態が一高時代とは様変わりしているということです。部分的には昔のまま残っているところもあるのですが、多くの増設や整備が行われていたのです……。これは映画にかかわる出来事です。この地下道はかつて建物間を移動する際に一高生が使っていた地下道ではあるけど、私たちは以前のように地下道を通過することはできない。ただ、現在の地下道であれこれが見えたり聞こえたりする私たちの意識には、授業終わりに寮へと戻る一高生たちの姿も幽かに思い浮かんでいたかもしれない。さて、この道をどうやって人々に見せられるのだろうか。この地下から何が明るみに出てくるのだろうか。このような問いかけが私たちのプロジェクトを方向づけています。

 

 

報告・撮影:小手川将(EAAリサーチ・アシスタント)