2023年4月8日(土)14時より、第22回東アジア仏典講読会をハイブリッド形式にて開催した。今回は土屋太祐氏(新潟大学准教授)と小川隆氏(駒澤大学教授)により、それぞれ『宗門十規論』と『宗門武庫』の講読がなされた。
土屋氏は『宗門十規論』の第八章を講読してくださった。そこでは以下のような真理と教説の関係が示されていた。すなわち、様々に説かれた教説はみな真理を示すものであり、真理を悟ることなく教説を丸暗記するようでは意味が無い。また真理を悟るだけで、教説を蔑ろにするのもまた誤りである。なぜなら教説に依らなければ真理を示すことはできず、禅門に対する嘲笑を招いてしまうからである。つまり真理と教説の双方を修めることが求められるのである。
小川氏は『宗門武庫』の第10段、汾陽善昭の酒肉と紙銭の話を講読してくださった。善昭は若くして両親を亡くし、世を厭い出家した禅僧である。彼が一寺の住持となった後、門下の修行僧に対し夢で亡き父母に求められたと述べ、世俗の礼に従い酒肉と紙銭を祭壇に供えた後、その酒を飲み肉を食らった。これは戒律に反する行為であり、ほぼ全員の修行僧がそれに失望し立ち去ってしまった。だがこの善昭の行為は、表面的な持戒に拘泥する者を一掃するものであると同時に、亡き父母に対する己が思いに踏ん切りをつけるものでもあったという。
以上両氏の発表の後、参加者より伝法の正統性などに関する質問が出され、議論が為された。
報告者:柳幹康(東洋文化研究所)
【報告】第21回東アジア仏典講読会
【報告】第23回東アジア仏典講読会