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2022.07.25

【報告】EAA「戦間期思想史を語る会」準備会(4)

    2022720日(水)、EAA「戦間期思想史を語る会」4回目の準備会が対面とオンラインのハイブリッドで開催された。本研究会は20世紀前半の戦間期(およびその前後の時代)における世界諸地域の思想・言論を取り上げ、地域・ジャンルを横断する普遍的な問いを共有することを目指している。今回ではメンバーたちがはじめて揃い、顔合わせを行なった。

    まず、企画者の一人である郭馳洋氏(EAA特任研究員)は本研究会の趣旨および戦間期の時代背景、企画のきっかけ、活動の内容について説明した。次に各メンバーから、自身の研究内容や戦間期に関わる関心事項を含む自己紹介がなされた。
    明治・清末の哲学言説の考察に取り組んできた郭氏は戦間期における大衆・民衆論、新しい共同体を構築する様々な試みの屈折に関心を示した。ドイツ哲学と日本哲学を研究してきた宮田晃碩氏(東京大学)はハイデガーにおける詩論、das ManVolkの捉え方、和辻哲郎の国家論・民族論に関心を寄せた。近代朝鮮の思想・文学を専門とする閔東曄氏(東京大学)は植民地における「近代」と「近代の超克」の問題、西洋学知の受容に興味があると述べた。近代ロシアの思想について研鑽を重ねてきた小俣智史氏(早稲田大学)は戦間期の東アジアにおけるフョードロフ思想の広がりと翻訳、ユーラシア主義と当時の日本思想との関連性に注目した。      

    明治後期の『校友会雑誌』に現れた一高生徒の思想を研究している高原智史氏(東京大学)は戦間期における学生の知的基盤の変化、マルクス主義や教養主義との関係に目を向けた。日本・沖縄近代思想史とりわけ伊波普猷の思想を専門とする崎濱紗奈氏(EAA特任助教)は近代における「近代の超克」言説、ロマン主義、農本主義、プロレタリア文学を関心事項に挙げた。モーリス・ブランショ研究に携わってきた髙山花子氏(EAA特任助教)は、「フランス的なもの」をめぐる言説や「人民(peuple)」の問題に関心を抱き、東アジアの思想界に影響を与えたベルクソンにも言及した。最後に本研究会のもう一人の企画者、近代中国の国語形成史を専門とする陳希氏(EAA特任研究員)は主に国語運動における「大衆」の語られ方、大衆と言語・方言、ネーションとの関係について話した。
    その後、メンバー全員で研究会の進め方、開催頻度、資料の共有について確認した。長い準備期間を経て、本研究会はいよいよ本格的に動き出そうとする。

報告:郭馳洋(EAA特任研究員)
スクリーンショット:陳希(EAA特任研究員)