2021年3月16日14時より、駒場キャンパス101号館セミナー室でEAAが開講する教育プログラム「東アジア教養学」第1回修了式が挙行された。首都圏ではいまだに緊急事態宣言が発令中であったため、オンライン中継を併用したハイブリッド方式で式を開催した。修了式では、まず中島隆博EAA院長より祝辞が述べられた。中島氏は、東アジア発の新しい学問をめざす志に改めて触れるとともに、困難なパンデミック下の1年でEAAの学生たちがみせた若い「知性の輝き」を言祝いだ。祝辞に続き、中島氏から初の修了生である孔德湧氏に修了証が授与された。第1期生、第2期生、EAAスタッフ、ならびにオンライン参加の来賓に囲まれ、セミナー室にはひときわ大きな拍手が響き渡った。
その後、在校生を代表して、籔本器氏から孔氏に向けて送辞が述べられた。籔本氏は、入学以来の先輩である孔氏とのエピソードを回顧するとともに、プログラム開講後まもなく始まった「コロナ下」の学生生活で、孔氏の積極的な活動が他の学生にとって導きであったと述べた。
この送辞に応え、修了生の孔氏が答辞を述べた。孔氏は自身のEAAでの経験について、穏やかではあるが、熱を帯びた調子で語った。孔氏がプログラムで学んだ大きな事柄は「揺れ動く」大切さであったという。孔氏は自身のあり方をめぐり葛藤し、かつ何かを成し遂げることを渇望するなかで「東アジア教養学」プログラムに出会った。プログラムの必修授業「東アジア教養学理論」、「東アジア教養学演習」で古典のテクストを読み、孔氏は古典の先人たちが葛藤や渇望に対して鮮やかな答えを示してくれたように感じたという。しかしそれと同時に先人たちにも少なからぬ矛盾や「過ち」があったことを踏まえ、悩み続けながら「揺れ動」き「学問する」ことが重要であると実感を得た。孔氏は不確定な現実の不安に対して「揺れ動き」つつも、私たちはそれに向き合う作法を会得していく必要があるだろうと述べた。最後に「パンとバラ」のたとえを取り上げ、孔氏は卒業後もふたたび新しい不安に自身は「揺れ動く」であろうが、生きるための「パン」のみならず、人生に深い感動を添える「バラ」を引き続き追い求めていきたいと答辞を結んだ。
修了式の最後には参会者一同で集合写真を撮影した。この日はプログラムへ新たに加入した第2期生が第1期生と顔合わせする最初の機会でもあったため、修了式後も学生たちは名残惜しそうに相互に長い議論を交わしていた。「commencement」(始まり、卒業式)の語が示す通り、終わりはまた始まりでもあることに深い感銘を受けたひとときであった。
報告者:
具裕珍(EAA特任助教)、髙山花子(EAA特任助教)、前野清太朗(EAA特任助教)