2025年2月8日(土)に第41回東アジア仏典講読会をハイブリッド形式にて開催した。今回は張超氏(PSL研究大学フランス高等研究実習院専任副研究員)がフランス語の専著Notes au fil du pinceau dans le bouddhisme Chan (XIIe-XIVe siècle)(中国禅門隨筆研究:十二至十四世紀)の第四章「俗世權力之使用說明書」を紹介くださった。小川隆氏(駒澤大学教授)が通訳を担当した。参加者は対面16人、オンライン18人であった。
第四章は、『羅湖野錄』や『感山雲臥紀譚』などを分析している。士人への摂化、出処の道、外護なしの三パターンから、禅宗僧団と皇帝・士人の関係をまとめた。とくに、一見同じく外護者として振る舞っているが、本質的な違いがあるという指摘が興味深い。すなわち、張商英は学仏最高水準で僧団からも称賛される代表的外護者であるが、僧の価値観を真には理解していないのに対して、黄庭堅は一流の僧と真の共鳴を有し、僧団に実質的な配慮も示した。
また、禅僧と士人との親近な関係の例が数多く挙げられているが、これらの士人は士人階層の主流ではないとの指摘も重要だと考えている。張氏によれば、宋代では国家規模の破佛・廃仏は行われなかったが、僧尼という特殊な社会集団に対する統制はより系統的になった。それは、中央では、僧尼および寺院に対する一連の法令として現れ、地方では、地方官による違法な寺観・信仰への打撃、違法な僧尼への懲罰として現れたと説明した。
張氏は著書の最後で、こうした矛盾に満ちた(ようにみえる)中国の禅宗僧団と世俗権力の関係性をどのように説明するのか。楽しみにしている。
文責:黄霄龍(EAA特任研究員)
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【報告】第40回東アジア仏典講読会