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2024.08.16

【報告】EAAワークショップ「日中友好協力経済建設の歴史及び未来世界のビジョン」

 202488日(木曜日)、EAAワークショップ「日中友好協力経済建設の歴史及び未来世界のビジョン」が東京大学駒場キャンパス東アジア藝文書院セミナールームにて開催され、中国・重慶大学人文社会科学高等研究院の鍾准副教授による「鉄道建設と日中関係」というテーマの講演会が行われた。

 鍾准氏の講演は、鉄道建設が歴史と現実において持つ重要性を経済、政治、軍事、社会文化の観点から探討した。まず、鉄道が全国統一市場と専門分業の促進、都市化の推進、国家統一と中央政府の統制において果たす重要な役割を明確にした。軍事面では、鉄道が日清戦争において戦略的価値を示したことを指摘した。社会文化面では、鉄道が人々の生活様式を変え、正確な時間観念を代表とする現代の日常生活モデルを形成したと述べた。

准氏

 次に、鍾准氏は日中関係史における鉄道建設について説明した。特にいわゆる「帝国主義」時代、日本が運営した南満洲鉄道(満鉄)は侵略の象徴とされるが、その技術と管理モデルが後の中国の鉄道建設に一定の影響を与えたことを指摘した。第二次世界大戦後、新たに成立した中華人民共和国は国内外で大規模な鉄道建設を行い、新興独立国への援助としても鉄道建設を支援した。例えば、中国がタンザニアとザンビアで建設した鉄道は、経済的・技術的な挑戦に直面しつつも、中国の外交戦略と対外援助の政治的意図を反映している。また、日中国交正常化後、日本はODAローンを通じて中国の鉄道建設、特に石炭輸送鉄道を支援し、日本のエネルギー輸入ニーズに対応した。21世紀初頭には、日本は中国に高速鉄道技術も移転している。

 最後に、鍾准氏は現代の日中両国が海外鉄道建設で展開する競争について論じた。中国と日本が海外鉄道プロジェクトで競争する際、経済利益だけでなく、両国の外交戦略と国際規範の制定も関係していると指摘した。中国は政策銀行を通じて融資を提供し、国内企業の海外鉄道建設への参加を奨励している。一方、日本は「高品質」と「長寿命」の鉄道基準を強調している。両国が自身の鉄道輸出戦略を推進する中で、予算超過や建設遅延といった共通の問題にも直面していることが述べられた。鍾氏は、日中両国の鉄道建設における競争は協力と相互学習の機会を伴っており、これが将来の国際鉄道建設の構図に影響を与え続けるとした。

 羽根次郎氏(明治大学)は、技術と政治の関係、特に鉄道建設における融資と基準の問題について応答した。彼は西洋の価値を基準とする「文明国家」基準を批判し、この基準が先進国の独占を強化するものであるとし、中国は多元主義と内政不干渉の原則を堅持し、先進国の独占クラブに対抗すべきだと述べた。

羽根次郎氏

 吉田和樹氏(大連外国語大学)は、日中鉄道外交の歴史と現状を探討し、「帝国主義」時代および協力と競争の段階における政治的動機を強調した。中国の鉄道外交の発展が異なる政治的・経済的目標を反映しており、人類運命共同体理念が現代の日中関係において重要であると述べた。

吉田和樹氏

 さらに、汪牧耘氏(EAA特任助教)は、国際援助の複雑性について発言し、鉄道建設における技術と経済要因の重要性を強調し、中国がミャンマーでのプロジェクトで挫折した後の実用的な転換と国際規範が援助プロジェクトに与える影響を指摘した。石井剛氏(EAA院長)は、高速鉄道建設が地域経済と社会に与える影響を述べ、日中協力の重要性を強調し、歴史問題が両国関係に与える影響を指摘して、友好関係を基礎とした協力モデルの模索を呼び掛けた。

報告:張子一(EAAリサーチ・アシスタント
写真:席子EAAリサーチ・アシスタント