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2024.04.10

【報告】2024 Sセメスター 第1回学術フロンティア講義

2024年45日(金)、学術フロンティア講義「30年後の世界へ――ポスト2050を希望に変える」の第1回がオンラインで行われた。ガイダンスとなる初回では、コーディネーターの石井剛氏(EAA院長)が本年度のテーマの説明と各回の担当講師の紹介を行った。

冒頭で、石井氏は教養学部の歴史を紹介しつつ、教養とは何かということについて話した。それは教員・学生・職員らは教養がある価値を有すると信じており、教養を愛しながら生活していることだと述べた。そして、東アジア藝文書院では、西洋において発展してきたリベラルアーツという基礎教育と東アジアの古代の六芸(礼楽射御書数)を融和させ、新しいリベラルアーツを実践していき、書院としてのアカデミックコミュニティーを作っていきたいと説明した。

続いて、石井氏は「世界」と「人間」の再定義と、空気の価値化という二点から、講義の問題関心について述べた。「世界」と「人間」という言葉は自明だと思われるが、実はともにもともと宗教的淵源があり、多様な意味が込められてきた。「人新世」と言われる現在、産業革命以降の生活と文明を反省し、「世界」と「人間」を再定義することは、新しい時代を迎えるベースとなる。さらに、石井氏は「共生」という概念を借りて、人類を超えて、より多くの地球に住まう生命体まで広げて、空気の価値を再考することを主張した。気候変動が深刻になっていくのに伴って、世界が分断されていく、そして政治的問題や社会的問題が今後加速していく可能性について、注意を喚起した。

以上の問題関心を踏まえて、石井氏は今年度の「30年後の世界へ――ポスト2050を希望に変える」という講義の趣旨を述べた。気候変動対策として、多くの国が2050年をカーボン・ニュートラル実現の期限としている。この目標が2050年に達成できるかどうかはともかく、仮に達成されたとしたら、2050年以降の世界はどうなるだろうか。おそらく地球温暖化がさらに進行し、今より大きな規模かつ高い頻度で様々な自然災害が起こっていくことは予想される。さらに、世界秩序がどうなっていくのか。今回の講義では、復興の技法や、ロゴスの複雑化、惑星時代の人間という三つの柱を立てて、多岐にわたる分野で活躍される先生方を講師陣に迎える。皆さんと「問い」を共にして、希望を持って、2050以降の世界を考えてみることを楽しみにしている。

 

報告者:林子微(EAA リサーチ・アシスタント)