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2024.01.24

【報告】Japanese Philosophy Network 第3回研究会

2024123日(火)17:00より、東京大学駒場キャンパス101号館11号室で、Japanese Philosophy Network 3回研究会が開かれた。これは文字どおり、日本哲学に関心がある人たちのネットワークを駒場に作ろうという趣旨のもと、張政遠氏(総合文化研究科)、桑山裕喜子氏(UTCP特任研究員)、Dennis Stromback氏(グローバル教育センター特任講師)の3名によって昨秋に立ち上げられた企画である(1回報告2回報告)。

今回は髙山が、「坂部恵のインメモリアル概念(The Concept of the Immemorial in Megumi Sakabe)」と題して英語発表を行った。坂部恵(1936-2009)はカント研究で知られている哲学者だが、和辻哲郎や九鬼周造といった日本哲学についても旺盛に取り組んでいたことで知られている。Japanese Philosophy A SourceBookでの説明や、野家啓一による追悼文「日本語で哲学するということ」を参照しながら略歴を紹介したあと、著作集には収録されていない『かたり』(1990年、文庫2008年)で展開される「かたり」の議論において、どのように非日常的な神話(ミュートス)のインメモリアルな時間との接触が描かれるのかを概観した。そして「インメモリアル」という表現が『和辻哲郎』で引用されるガストン・バシュラールの『空間の詩学』にあることや、晩年に坂部がパースの宇宙論に関心を深める中ではるかな太古が想起され、なおかつプロットの問題として思考されている点を考察した。ディスカッションでは、和辻の「風土」とバシュラールの「家」の違い、自然と人工物の問題、芸術、とりわけ詩の言葉、一般化の危険性といったさまざまな事柄が議論された。

 おもに取りあげた文献
・坂部恵『理性の不安:カント哲学の生成と構造』(勁草書房、1976年)
・田島節夫、坂本賢三、市川浩、坂部恵、村上陽一郎編『人称的世界』(弘文堂、1978年)
・坂部恵『和辻哲郎』(岩波書店、1986年)
・坂部恵『ペルソナの詩学』(岩波書店、1989年)
・坂部恵『かたり』(弘文堂、1990年)(『かたり:物語の文法』ちくま学芸文庫、2008年)
・木村敏、坂部恵監修『〈かたり〉と〈作り〉:臨床哲学の諸相』(河合文化教育研究所、2009年) 

言及した、2006年度学術俯瞰講義「学問と人間」の坂部恵の講義動画(UTokyo OCW)
第10回 「人間学のまどろみ」
第11回 「「クリティカ」と人文主義の伝統」
第12回 「バロックから見返す精神史 科学・哲学・文学」

報告:髙山花子(EAA特任助教)
写真:桑山裕喜子(UTCP特任研究員)