2023年12月12日(火)17時から東京大学駒場キャンパス101号館11号室にて、金杭氏(延世大学)によるEAA連続レクチャー第3回「内戦と戦後民主主義2:ヤクザ撲滅と政治の行方」が開催された。戦後民主主義を内戦という概念でとらえる目論みから企画された一連のセミナーの最終回である今回は、第1回と第2回の内容を振り返ったあと、ポスト冷戦における内戦の具体例として、反社会性力、反社会的言説がとりあげられた。
金氏によると、ヤクザとは前近代的な組合から生まれてきたものであり、実のところは非-反体制であるという。つまりやくざの目的は自衛と存続であり、体制転覆は目的ではなく、自己目的が主眼である。ところが高度経済成長の時期に至って、犯罪集団としてのヤクザが登場する。そこから検討されたのは、国の安全秩序を守るための公安が、暴力団追放センターの誕生や組織的犯罪処罰法、TOC条約によって、グローバルな文脈での犯罪処罰と合流していった経緯である。公安の範疇にヤクザが包摂され、公安概念が変容し、やがて反社会勢力が利益追求犯罪集団として、政治性を除去され、恣意的に定義されるようになった流れが、戦時下の非国民とも比較して問題提起された。
ディスカッションでは警察によるヤクザの利用や治安維持のための共存関係が変化した点や、全体主義がごろつきを利用するように、体制に要請される反社会性力が今日ではどのようなものなのか、とりわけ資本主義がきわまる現在における経済秩序とともに議論された。1970年頃にヤクザそのものが資本主義化し変貌したあと、ヤクザそのものに焦点を当てると必ずしも歴史と接続されない理念による共同体の問題が浮上するなど、多くの視点が生まれた。
報告・写真:髙山花子(EAA特任助教)
【報告】EAAワークショップ「東アジアにおける学校と大学」
【報告】EAAトークシリーズ「アートを通じて空気をする」 第3回「体の中の空気たち——Doing Air through Farts」