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2024.05.02

【報告】2024 Sセメスター 第2回学術フロンティア講義

2024年419日(金)、EAA主催の学術フロンティア講義「30年後の世界へ——ポスト2050を希望に変える」第2回が駒場キャンパス18号館ホールで行われた。溝口勝氏(東京大学)が 「レジリエンスと地域の復興」というテーマで講義を行った。栃木県の農家の次男として生まれた溝口氏は東大を経て、農業基盤と土壌の専門家として、研究に携わるだけでなく、内閣府技官も務めたことがある。こうした経歴を持つ彼は、2011年の東日本大震災・原発事故に直面した時、使命を託されたと感じたであろう。「勝手に動くな」と言わんばかりに行政から「勧告」されても、打開策を模索するために自分で調査をしなければならなかった。溝口氏は放射線測定器を持って福島に行くことを決意した。その後、講習会や調査、実験を積み重ね、農村における通信インフラの整備や農地除染法の開発などの実績もあった。溝口氏によれば、放射性セシウムは土壌中でほとんど移動していないため、田んぼに穴を掘り除染土を埋め、汚染されていない土を被せる「までい工法」という簡易な埋設法が可能になるという。しかし、新たな工法の「実績」がなく、いざという時に誰かが責任を負うことになる問題もあるため、行政的には通らなかったという。科学者の知見と政府側の判断、そして各方の責任問題は、原発事故の前も後も悩ましい課題のままである。

報告・写真:銭俊華(EAAリサーチ・アシスタント)

 

溝口勝先生の研究室ウェブサイトより:https://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/lecture/eaa/

 

リアクション・ペーパーからの抜粋
(1)「今回の授業では、農村とは単なる生産の場ではなく、人が農業を通じて生活し、その営みを続けていく場であるというお話がとても印象的だった。農村には生産活動という枠を超えた人々の生きた活動があることは、考えて見れば当然のことではあるが、普段の生活で農作物を消費する中で、その背後に必ずあるはずの農村の生活に対しては意識が希薄になっていたことに気づかされた。このように、生活の場としての農村の姿に対する理解が十分でないということは、現地の復興に対する大きな障壁となり得ると思われるが、この理解を広める上ではどのような取り組みが求められるのか。(教養学部・3年)

(2)被災地は、被災地ということが一種のブランドになって、人を呼び込むことも可能であるという点で、復興はある意味ではチャンスなのかもしれないと少し思った。犠牲になった方々に失礼な表現であることはわかっているが、リセットされた状態で再スタートしていくチャンスは滅多にない。何もないところから、伝統に縛られることなく生きていけるからだ。(教養学部・1年)