12月5日(土)日本時間 16 時より、第4回日中韓オンライン朱子学読書会が開催された。これまで同様、EAA のほか、清華大学哲学系、北京大学礼学研究中心、科研費基盤研究(B)「グローバル化する中国の現代思想と伝統に関する研究」との共催である。
今回は陳叡超氏(首都師範大学)が司会を務め、唐紀宇氏(国際関係学院)が 2016年12月に出版した『程頤『周易程氏伝』研究』(人民出版社)について報告を行った。
唐氏は2011年に北京大学で哲学博士を取得した。張学智教授や楊立華教授に師事し、宋明理学を専攻、程頤の思想を専門的に研究することを決めたという。中国哲学研究においては、ある思想家の哲学を論じる際、その語録等が中心的に取り上げられることが多い。しかし、語録はその思想家自身が執筆したものではない場合が多く、その弟子等が中心となってまとめられたものである。思想家が自らの学問の集大成として取り組むものは経学である場合が多い。とりわけ程頤については、その易学著作である『周易程氏伝』は、彼が唯一、自らの手で書き上げたものである。程顥とまとめられて語られがちな程頤の思想の、ありのままの様子を窺える重要な著作である。
唐氏の著作は、解釈学研究と、哲学研究の二部に分かれている。今回の読書会では、解釈学研究の部分のみ取り上げた。まずは程頤が注釈を完成させた後に書いたといわれる「易伝序」を読み解き、彼が「易」に対してどのような認識を持っているのかを明らかにした。また、「易」を最も正しく解釈した人物として孔子を高く評価した上で、改めて「易」を純粋な儒家経典によって系統的に解釈しようとしたという。次に、「彖」(ここでは卦辞と彖伝を含む)にみられる、様々な解釈学の概念について詳細に説明がなされた。解釈学のうち重要な要素を占める「爻」や、哲学研究について時間が足りず説明を聞けなかったのは残念であったが、質疑応答は、易の学派の分類として定着している「義理派」と「象数派」という区分形式についてどう考えるかということや、本書が解釈学研究と哲学研究に分けて論じたのはなぜかという問題が挙げられ、また、解釈学の深い部分にまで踏み込んだ討論がなされ、大変充実したものとなった。
報告:田中有紀(東洋文化研究所)