2020年10月23日(金)、第4回「UTokyo-PKU Joint Course」が開講された。前回(第3回)に引き続き、国際政治を専門とする藤原帰一氏(法学政治学研究科)を講師にお迎えした。
藤原氏は、前回の講義に引き続き、グローバルな危機を前に、国際秩序が衰退しつつあると指摘した。その原因の一つとして、特に近年の各国におけるポピュリズムの台頭に注目し、米大統領ドナルド・トランプを例に、ポピュリズムの特徴を示した。これまでトランプ氏は一貫して、指導層として国家を動かしてきたエリートを排し(反エリート主義)、同時に移民に対しても厳しい政策をとってきた(排外主義)。また、トランプ氏は国内市場を優先しTPPやNAFTAなど市場の自由化に反対してきた(反リベラリズム)。さらには国際政治における協調をも拒んできた(反グローバリズム)。
こうした米大統領のポピュリズム的な姿勢は、国際経済の縮小などの形でグローバル社会にも影響を及ぼしている。また、アメリカが世界的な覇権という立ち位置から外れてきている。藤原氏は、これらのグローバルな変化が、COVID-19の流行でさらに加速していると強調した。
学生との議論では、アメリカにおける自由民主主義の今後に関しての意見が多く、自由民主主義と資本主義・官僚制との関係性、反エリート主義と反知性主義の融合、来月予定されているアメリカ大統領選の行方について、意見が交わされた。ほかには、学生からの意見として、アジアにおける排外主義や、国際司法裁判所など国際組織の影響力の低下が指摘された。前回のレクチャーに引き続いて、アメリカをはじめイギリス、インド、シンガポール、トルコ、中国など、様々な国を例にさらに深い意見交換が展開された、有意義な時間となった。
報告者:二井彬緒(EAAリサーチ・アシスタント)