2020年10月16日(金)、第3回「UTokyo-PKU Joint Course」が開講された。今回は次回(第4回)との二回構成で、国際政治を専門とする藤原帰一氏(法学政治学研究科)を講師にお迎えした。
まず、藤原氏はCOVID-19の世界的流行を通して、国境を越える責任、またグローバル規模の危機に対するリスク・ガバナンスの再考について問題提起した。氏は、COVID-19の流行に対する各国首脳の反応、特にポピュリズム傾向を持った政治的指導者らの動向に注目した。例えば、アメリカ、イギリス、ブラジルである。これらの国では、権威主義的な姿勢で専門家の提言に耳を貸さず、また、国際機関や地域組織との協力・連携を軽視する、といった共通点が見られる。アメリカはパリ協定やWHOを離脱しており、イギリスのEU脱退、いわゆる「ブレグジット」は記憶に新しい。
このようにナショナリズムの傾向が強まる中で、COVID-19が突きつけた課題とは、まさに今後の国際社会におけるリスク・ガバナンスであった、と藤原氏は強調した。これは東日本大震災と福島第一原発事故、9・11などのテロ、山火事や台風、ハリケーンといった自然災害や気候変動、移民・難民問題などにも当てはまる、という。こうした国境を超えて生起する現代の国際問題は、グローバルな連携によってのみ解決可能であり、それゆえに国際機関や地域組織の役割が以前にまして求められるだろう、と締め括った。
参加した学生との討議では、特に「COVID-19の世界的流行において、ローカル・コミュニティとグローバルな連携との関係性をいかに捉えるか」を切り口に、アメリカや中国を例にとりつつ、活発な意見が交わされた。藤原氏と学生とのやりとりにより、ローカル・ガバナンスの重要性、同時に、ローカル・コミュニティが持つ経済的限界、政治的な限界が再確認された。また、COVID-19の流行と気候変動の例との比較も検討された。次回も引き続き藤原氏を講師に迎え、ポピュリズムについて議論がなされる予定である。
報告者:二井彬緒(EAAリサーチ・アシスタント)