9 月 19 日(土)日本時間 16 時より、第2回日中韓オンライン朱子学読書会が開催された。第1回同様、EAA のほか、清華大学哲学系、北京大学礼学研究中心、科研費基盤研究(B)「グローバル化する中国の現代思想と伝統に関する研究」との共催である。
今回は谷継明氏(同済大学)が司会を務め、陳叡超氏(首都師範大学)が2020年5月に出版した『司馬光易学宇宙観研究:以『潜虚』為核心』(北京大学出版社)について報告を行った。
北宋の思想家である司馬光の『潜虚』は、楊雄『太玄』にならった易学著作である。未完だったためテキストは完全なかたちで残っておらず、後人が補った部分もある。『潜虚』には八つの易図(「気図」「体図」「性図」「名図」「行図」「変図」「解図」「命図」)があり、読書会ではその構造や思想的な意味について詳細に説明がなされた。司馬光については数多くの研究があり、とりわけその歴史学については様々な角度から研究されているが、易学については基礎的な研究があるに過ぎない。陳氏は、正面から司馬光の易学研究に取り組み、複雑な象数易の数理的な構造を読み解いた。本書は、象数易の構造を把握するのみならず、易学思想史中にそれを位置付け、その背後にある「義理」を解き明かし、司馬光の思想全体、あるいは北宋思想史全体の中に位置付けた力作である。これまでの研究が乗り越えられなかった易学研究と哲学研究の間の溝を埋め、司馬光が解き明かそうとした「人世価値の天道における基礎」を、『潜虚』の易学構造の中から読み解き、これまでの研究の欠点を克服した。
今回の読書会は、およそ2時間半にわたり、最大で31名の参加者があった。質疑応答は、司馬光の「中和」概念の定義は何か、司馬光の易学は彼なりの簡潔さ・自然さを追求した結果といえないか、日本や韓国での研究状況はどうかなど、多岐に渡った。通常の国際学会等では、特に象数易のような数理的易学研究を扱う場合、易学の構造そのものについての説明は、時間がなくて省略されてしまうことが多い。今回は、複雑な象数易の解釈をじっくり聞くことができ、それによって、司馬光の易学の特徴をよりよく理解できたように思う。
報告者:田中有紀(東洋文化研究所准教授)