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2020.03.09

EAA若手研究発表支援活動報告:Chuo-UHM-UTokyo Student Conference

2020年1月17日にハワイ大学マノア校にて開催された、Fifth Chuo-UHM-UTokyo Student Conference on Linguistics, Psycholinguistics, and Second Language Acquisition に出席した。この学会は、言語学や心理言語学、第二言語獲得について学ぶ、中央大学、ハワイ大学マノア校、東京大学の学生が、自分の研究について発表し、学生間での交流を図る学会である。研究発表では、他大学の学生のみならず、他大学の教授からも様々なコメントやアドバイスを受けることができる良い機会である。

学生の研究発表の前には、ハワイ大学マノア校のBonnie D. Schwartz教授とインディアナ大学のRex A. Sprouse教授によるPlenary Lectureがあり、第三言語獲得に関する講演をしていただいた。

(Plenary Lectureを聴いている参加者の様子)

Plenary Lectureでは、第一言語や第二言語が第三言語でのふるまいに与える影響や、第三言語の獲得モデルに関して、データを示しながらお話しいただいた。第三言語獲得の研究について学ぶことのできる貴重な講演であった。

その後、ポスター発表形式での、学生による研究発表が行われた。ポスターセッションは、約10人ずつの3つのセッションに分けられており、それぞれの学生が、自分の研究に関する発表を行なった。

(ポスター発表会場の様子)

発表の内容は、第二言語に関する研究が多くみられたが、その中でも、文の構造に関するものや、語の形態的要素に関するもの、音に関するもの、など多岐にわたるものであった。私自身も、第二言語に関する研究を行っていることもあり、大変興味深い発表が数多くあった。他大学の学生がどのような研究をしているのかを知ることができると同時に、他大学の学生や教授と、自分の研究に関する議論を行うことができる場であった。

(ポスター発表の様子)

私は、“Is universal quantifier sensitive to distance? : A case study of Japanese nested structures” というタイトルで発表をした。これは、第一言語文処理に関する研究で、どのような場合に文理解中の処理負荷が増加するのか、を眼球運動測定という手法を用いて調べたものである。複数の節を含む文を読む際に、関連する要素同士が離れた位置にあるときには、それらの要素が隣同士にあるときに比べて、処理負荷が増加する場合がある、ということが知られているが、その処理負荷の要因となるものをより詳しく検討した。発表において、“なぜ”そのような場合に文理解中の処理負荷が増加するのか、という点について、他の参加者と議論することができた。

ポスター発表の後は、学会に参加している教授や学生が交流できるreceptionの時間も設けられ、ポスター発表の限られた時間では議論することのできなかったことについて意見交換をしたり、他大学の学生の学生生活について話したりすることができる時間であった。私も、このreceptionの時間に、他の研究者と話すことができ、より多くのコメントやアドバイスを頂くことができた。また、日本だけではなく、海外の大学院生が普段どのような学生生活を送っているのかを聞くことは、自分が学生生活を送る上で、良い刺激となるのではないかと思う。

ハワイに滞在中、ハワイ大学マノア校と東京大学の教授とともに、共同研究プロジェクトに関するミーティングも行った。このプロジェクトは、第二言語での文処理に関する研究で、リアルタイムでの文理解中に、知識を使って予測をしながら処理しているのか、さらには、第一言語と第二言語の違いが、第二言語における文理解中に、干渉効果を引き起こすのかどうか、を検討するものである。ミーティングでは、実際にこれから行う眼球運動測定実験について、細かい点を話し合い、実施に向けて大きく前進することができた。

今回の若手研究発表支援を受けての活動では、普段交流する機会がほとんどない他大学の学生たちと交流し、他大学の学生や教授たちと自分の研究について議論することができた。今回、得られたコメントやアドバイスを熟考して、これからの自分の研究に役立てたいと考えている。また、共同プロジェクトに関するミーティングも行うことができ、充実した滞在とすることができた。今後、この研究も進め、研究成果を発表できるよう、共同プロジェクトにも引き続き取り組んでいきたいと思う。このような機会を与えてくださった関係者の方々、そして、学会を含む今回の滞在で関わった方々に、ここで深く感謝の意を記したい。

報告者:津村 早紀(総合文化研究科)