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2020.01.06

【EAA Dialogue (2) 】Professor Bret W. Davis

2019年12月19日、EAA本郷オフィスにて、第2回EAAダイアローグが開催された。今回のゲストはブレット・デービス氏(ロヨラ大学メリーランド校)であり、本書院の中島隆博氏と対談を行った。デービス氏は2019年9月にThe Oxford Handbook of Japanese Philosophyという実に814ページからなる大著を編者として刊行したばかりである。対談では主にデービス氏の研究の背景や、日本哲学の位置づけ、世界哲学の方向性などが話題となった。

本対談で中島氏はデービス氏に、研究の背景としての幼少期から大学時代までの話を尋ねた。デービス氏は、高校時代に西洋哲学と禅についての2冊の本を購入したことや、大学時代に休学して4年弱関西に留学したこと、またアメリカに帰国の後、大学院進学後に改めて京都に留学したことを述べた。アメリカと日本、西洋哲学(ハイデガーなど)と東洋哲学(西谷など)との間を行き来したことが、「意志」をめぐる氏の研究に大きく影響した。特に、後期ハイデガーと東洋哲学には意志の放下という共通したテーマがみられ、氏はそのことに強い関心を抱いてきた。

また対談の中でデービス氏は、欧米の哲学界における非西洋哲学の扱いを問題とした。欧米の哲学研究者に日本哲学や中国哲学の議論を聞いてもらうためには、まず徹底的に自身が西洋哲学をやらないと相手にしてもらえない。そのことに気が付いた氏は、ハイデガーを中心に本を執筆し翻訳を行った。氏が他の編者とまとめたJapanese and Continental Philosophy: Conversations with the Kyoto School(2011)も、このような状況を背景としている。自分の役割は西洋哲学界の端からではなく中心から西谷・老荘思想・禅などを紹介することであるとデービス氏は述べた。この点について中島氏も共感し、中国哲学の研究者がその分野内にとどまるのではなく、他との交流が必要であると述べた。中島氏が現在「世界哲学」のプロジェクトを進めるのも、安易な「比較哲学」ではなく、「日本哲学」や「世界」そして「哲学」そのものの枠組み自体を問題視したいと考えるためである。

企画から出版までに8年の歳月を要した大著The Oxford Handbook of Japanese Philosophyは、Japanese Philosophy: A Sourcebook(James W. Heisig, Thomas P. Kasulis ら,2011)やEngaging Japanese Philosophy: A Short History(Thomas P. Kasulis,2017)と並び、これからの日本哲学研究の基本書となるだろう。本対談では他にも、デービス氏のハイデガー研究や、「哲学」や「人格」といった訳語の問題など、様々な議論が交わされた。詳細はEAAダイアローグをまとめた本を将来刊行予定であるため、そちらを参考にされたい。

 

報告者:犬塚 悠(EAA特任研究員)